花雪シンフォニア | ナノ

!ASクラスメンバーは翔=唯と認知



「オチビちゃん仕事はどうだい?」
「(ビクリ)なっなななんだよ後ろから話しかけてくんなレン!」
「おや空手をやっているのに気配に気付かなかったのかい?」
「茶化すな!」


くわっと怒る翔もなんのその。
レンは愉快犯宜しくと言わんばかりに喰えない笑みを浮かべているので性質(タチ)が悪い。
翔はぎり、と奥歯を噛み締めたその刹那。


「あっ翔ちゃーん!」
「ゲッ那月・・・!」
「あれ翔、今日学校に来てたんだ!」
「久しぶりだな来栖・・・む、少し顔色が悪くないか?」
「音也に聖川・・・。
あーまぁ今日は休みを貰ったんだ、明日からまた仕事だ」
「今人気の美少女モデルが実は男だった、なんて世間が知ったら大騒ぎだからねぇ、オチビちゃんはそういう意味でも気が抜けない仕事だし、もういっそバラしちゃえば?」
「おい神宮寺、」


レンの発言に言葉を詰まらせる翔に、真斗はレンを窘める。
一つの正論を突きつけられた翔はぐうの音も出ない。

が、此処であまり空気を読まない台詞が飛び出てきた。


「そういえば翔ちゃん、今一緒にお仕事されているのってどなたなんですか?」
「・・・一緒?」
「え、翔って今一緒に仕事をしている人がいるの?」
「まぁいるっちゃいるけど・・・」
「え誰誰!?
俺も知ってる人!?」


興奮気味に自分に詰め寄る音也に若干後退りしながらも翔ははっきりとその名前を口にした。




「知ってるも何も・・・"あの"羽島幽だぜ?」



「・・・え?」
「は?」


てっきり音也は更に興奮するのだと思っていた。
だが実際の音也の反応は翔の予想とは違い、静かに狼狽の色を見せた。
そのリアクションに他のメンバーも眉を顰め、音也を見る。


「・・・羽島、幽?」
「・・・・・・音也?」
「一十木?」
「音也くん?」
「イッキ?」


全員が音也を呼んだ、その瞬間。
彼等の耳に届いたのは音也ではない、違う人間の声だった。


「翔くん、羽島幽さんとお仕事をご一緒にされているんですか!?」


バンッ!


『!?』


けたたましく教室のドアが開くと同時に響く一人の少女の声。


「な、七海・・・?」
「春歌?」
「ハルちゃん?」


周囲の自身に対する呼びかけも耳に届いていないのか、春歌は興奮状態のまま翔に近寄る。


「お、おい春歌どうし、」
「わたしの事はどうでも良いんですっ!
それよりも羽島さんです!!」


どうでも良いんだ・・・。
真斗達は春歌の勢いに呑まれ、半開きだった口を閉口する。
彼等がそうせざるを得ない何かが彼女にはあった。


「レディは羽島幽のファンなのかい?」
「勿論です!
わたしの中では羽島さんとHAYATO様は雲の如く高い存在でっ・・・!」


今まで見た事が無い位の興奮状態である春歌のマシンガントークに女性の扱いを心得ている筈のレンですら沈黙したその姿を見て、内心音也達はこれって一体どういう状況なのだろうか、と首を傾げた。


そして春歌の登場ですっかり忘れそうになったが彼女の名前を聞いた時の音也の表情が翔達の脳裏から離れる事はなかった。

  仕事の合間、学園にて    

お待たせしました!
そして本編にて初のASクラスメンバー集合です!
じわじわと近付く核心(?)・・・はてさてトキヤが出てきていませんが出てこなかったのにはちゃんと訳があります。
さくっと終わらせる予定だったのに、それは叶わなさそうだ(汗

20121128