『吸血忍者カーミラ才蔵』が公開し、ルリが栞の専属スタッフとして決定して少し経った頃。
彼女の元に一つの仕事が舞い込んできた。
その仕事を引き受けてしまったのを皮切りに、彼女の未来が更に大きく変わることを本人を始め、誰も気付くことはなく。
ケース@
「・・・『銭ゲーマー』、ですか」
「そう。詳しいことはこの台本に載ってるからちゃんと読むように!
まぁ簡単に言うと100万円を一ヶ月で何処まで多く増やせるのか、という企画に貴女がその参加者に選ばれた訳よ」
栞はフリーズした。
永遠の言った言葉を理解するのに大分時間を使ったような気がする。
・・・・・・・・・・・・。
100万円を?一ヶ月で?
いやいやチキンにそんな大金を持たすな!
というより何で私!?
思考回路がショート寸前だった栞だったが何とか持ちこたえる。
そして更に話を聞いてみると、非合法なやり方でなければどんな方法でもOK、稼いだお金はそのまま自分の物になるというルールらしい。
(・・・えーと・・・じゃあ敢えて何もせずに100万をとっておいたら丸々私の物ってこと?
合ってるよね?)
心の声なので、それは番組的に問題アリだという突っ込みは誰も出来なかった。
しかし、永遠はそんな栞の心情を読んでいないにも関わらず、的確に突っ込んだ。
「分かっていると思うけど、何もせずに100万貰おうなんて思わないようにね?」
「・・・・・・(ギクリ)」
先手を打たれた栞は沈黙した。
卯月永遠は優秀なマネージャーであると共に読心術士らしい、と栞は自身の心に刻み付けた。
♂♀
そして収録を終えた彼女の手元には100万。
・・・普通、手渡しで渡すだろうか。有り得ないだろう。
というより、私は嘗てこんな大金を触ったことなんてあっただろうか。否無い。多分。
「どうするんですか、その100万円・・・」
「・・・・・・うん・・・」
ルリが恐る恐る一つの札束を凝視しているのを見て、栞もその視線を追うように同じく札束を見る。
・・・本当にどうしようか。
卯月さんに相談したかったけど、何だかんだで聞けなかったし・・・。
ていうか何で今日に限ってあの人はこの場にいないんだろうか。
永遠は現在会社に呼び出された為この場には栞とルリしかおらず、栞はルリの質問に半ば投げやりな感じで答えた。
「・・・とりあえず、盗まれないようにする」
「いえ、そうではなく・・・!」
100万を持っても何一つ顔色を変えていない栞にルリは顔を引きつらせた。
「大丈夫、だから。聖辺さんは気にしないで」
「ですから・・・!」
「それよりもう遅いし、早く帰らないと」
栞としては何とかこの話題を避ける為ルリを自宅へと帰らせることに成功させ、彼女も帰宅する事にした。
それにしても、本当に。
「・・・どうしよう、かな」
永遠から先日先手を打たれた為、何もしないわけにはいかない。
だが、栞の中ではノープランな上にどういう行動すべきなのか分からなかった。
「(うー・・・どうしよっかな・・・)・・・ぁ」
目に入ったのは一つのある店。
・・・そういえば今日最終日だっけ。
そろそろ営業終了時間だけど、まぁ良いかな。
栞は暫く見つめてある考えを頭から出した。
・・・うんそうしよう。
当たったら儲け物だ。
そんな軽い気持ちでその店―――所謂『宝籤売り場』に足を運ぶ。
数字は全て勘で。インスピレーションって大事だよね!
この行動が後に前代未聞のハプニングを起こしてしまい、彼女は深く後悔する事になる。
「12億ですってーー!?」
「さ、流石ですね・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
『銭ゲーマー』の企画に出演して2週間後。
羽島幽として参加した企画の結果が発表されるのは残り約2週間後だったのだが、オンエアどころか収録よりも早く知らされた結果に永遠とルリはその予想以上の金額に驚愕し・・・絶句した。
彼女は見事に当てた。しかも勘で、である。
しかし問題はその額だった。
何の偶然か、当てた合計金額は約12億。
当てた本人ですら暫く凍り付いた。
因みに今、ジャックランタン・ジャパンは上を下への大騒ぎである。
只管申し訳ない。
「・・・あの、何をしたらそんな大金になるんですか・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・秘密」
100万でも大金な筈なのだが12億となると、100万なんてはした金に思えてくる。
・・・駄目だ、私の金銭感覚が狂ってきた。
栞は相も変わらずの無表情だったが若干疲れを滲ませていたことに誰も気付かれることはなく。
彼女達がいる部屋に設置されたテレビから羽島幽が起こした前代未聞のハプニングについてテレビキャスターの興奮した声が響いていた。
二つ名獲得への道のり 其の壱
スミマセン、私の頭じゃ、主人公がどうやって約12億稼ぐか考えた末の結果がこれです。
現実世界じゃ有り得ませんよねこの額・・・しかし原作でこうなっている以上やらねばと思ったんだ。
本当に幽君どうやったのと問いただしてやりたい。
20120405