マックスの聖辺ルリ勧誘についてだが栞は殆どの確率で振られると思っていた。
だって『原作』では確か違っていた筈だし。
というのが彼女の意見だったのだが栞の予想に反し、ルリはOKしたらしく栞は内心唖然とした。
(えー・・・夢じゃなく?)
こんな私に?しかも専属?
うわ、何だろう凄く申し訳ないような・・・。
栞は内心動揺していたが、傍から見れば無表情なのでやはり誰も気付かない。
彼らの目には見目麗しい美女として映っており、心中で何を思っているかなど、気付かなくて当たり前なのだが。
そんな彼女―――芸名、羽島幽のキャラクターについて先日決定したことは記憶に新しい。
まずプロフィールは非公開ということ。
マックス曰く栞は雰囲気も相俟ってミステリアスな美女として売った方が人気が出るに違いないとの事。
(・・・美女って誰が。
そういうのって聖辺ルリみたいな人を指すんじゃ・・・?)
栞は自身の価値や容姿等の自覚をとんと理解していないのでよく分からず、下手に口を挟んでも面倒くさい事になると判断し、反論しなかった。
実際彼女にとってこの意見は有難い物だった。
家族――特に兄の静雄に余計な手出しをして被害を出さずに済むだろうから。
・・・最もその兄の天敵、折原臨也が手を出さなければ、の話であるが。
(・・・ま、あの人の事は置いといて。
その分パパラッチがこっちに来るかもしれないよね。
幽君はそうだった筈だし。
・・・否その前に私があそこまで人気者になれるとは思えないんだけど)
二つ目。
性格云々は特に何も言われなかったが、何故か一人称について言われた。
『私』ではなく『僕』。・・・何故。
疑問を口にしても良かったが栞はそれ位なら、と特に此方も反論しなかった。
下手に口出しして、もっと別の変なキャラを決められても困るし。
こうして『羽島幽』のキャラクターは決定した。
・・・キャラクターと言う程、あまり変わっていないか。訂正。
因みに、この時。
栞は家族について聞かれても、うっかりで口を滑らせないようにしようと誓った瞬間でもあった。
静雄のことを喋った瞬間、鉄拳が飛んでくるかもしれない。
兄さんはデコピンでも凄まじく痛いのに手や足なんて其れこそ冗談でなく自殺行為である。
栞は想像しただけなのに、恐怖心から来る悪寒によりブルリ、とその身を震わせた。
羽島幽という存在の確立
丁度良いので此処で区切ります。
次の話から勘違い要素が多く含みます。
20120405