その面は、ありきたりな縁日の店の隅で
明らかに異様に光っていた。
私がそれを手に取ると、友人が
「えーっ気味悪いからやめなよォ」と言ったけれど
私はどうしても心ひかれた。
家に帰ってつけてみると、ぴったり。
能面のような不気味さなのに
私が不器用に面の下で笑みの形をつくると、それに合わせて面もにっこり微笑うのだった。

私はうまく笑えない。
私は面をつけて外出してみた。
不思議と恥ずかしくなく、皆も気にしていない。
似合うのかな。
途中で友人に会ったけれど、全然私だと気付かれなかった。
嬉しいのかなんかフクザツな気持ちになる。
私は不器用に笑う。
面は綺麗に笑う。

泣きたくなったとき無理やり笑おうとしたら、面が勝手に笑ってくれた。
私は心地良くなる。
涙は悲しみしか引き起こさないけど、笑顔はきっと幸せを運んでくれる。
だから私は今日も笑う。
本当の笑い方を忘れてしまうまで、笑う。





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