「フィオレ、ナマエ!どうだ、何かあったか?」

花壇の中から顔を上げたドラコは振り返って二人に尋ねた。

「変わったものは見つかりませんね…」
「パパ!!ママ!見て!!」
「どうしたフィオレ!何かあったのか!?」
「イモムシ」
「バカ、触るな!」


ダンブルドアが告げた最後の課題は宝探しだった。



『諸君らにとっての大切な場所に、大切なものを隠してきた。その場所は君らしか知らず、そのものは君らにしか見つけられん。

さあ、準備はいいかね?

制限時間は3時間じゃ。』


ほっほっ、といつものように微笑んだダンブルドア。
混乱する生徒達の中で、ドラコはいち早く立ち上がり、ナマエに手を差し出した。


「行こう。あそこだ」
「はい」

答えるナマエもその場所に検討が付いているようで、その口からどこへなどという質問が出ることは無かった。

「またあの2人…!本当に息ぴったりね」
「お互いの考えてることが分かるんじゃないか……?」

通り過ぎざまにそんな囁きを耳にして、ドラコはフフンと気分が良くなった。

「当たり前さ。君らみたいな上辺だけの付き合いじゃないんだから」と、喉から出そうになった嫌味をとっさに飲み込めるようになったのは、ドラコの最も成長した部分である。

ナマエが傍に居るから。
ナマエに嫌われたくないから、
という思い一つで行動や言動を選択しているだけであって、彼のもともとの目立ちたがり屋で、高慢な性格が直ったわけではないのだ。


そういうわけで、誰よりも早く課題を達成させ、自分とナマエ、そしてフィオレとの間にある絆を全員に知らしめてやりたかった。
その目的に燃えていたドラコにとって、まさか自分が考えていた通りの場所に「それ」が無いことは、想定外のことであった。


「ありませんねぇ……絶対ここだと思ったのに」

中庭の花壇。
そこは、ドラコとナマエにとって一番とも言える大切な場所だった。


「ねえママ?どうしてこの花壇が大事なの?」

フィオレの問いかけに、ナマエはふわりと微笑んで答えた。

「ここはね、パパ……ドラコと初めてお友達になった場所なんです」
「何で今言いかけたのにやめたんだ」
「うっ、……だって、想像してしまって」

やっぱり恥ずかしくって、とナマエは顔を赤らめて俯いた。ドラコは雪の積もった芝の上に倒れた。

「何してるのパパ」
「雪を溶かしてる」
「ど、ドラコ!?大丈夫ですか!?」

駆け寄ったナマエに起こされて、頭の先からつま先まで雪を払ってもらったドラコは、つとめて何でもない顔をしてみせた。
しかし、その内なる喜びというかデレデレというか、をしっかりと感じ取ったフィオレに「パパとママはきっと今世界で一番ラブラブだわ!」と断言され、二人は本当に雪でも溶かしそうなほど真っ赤になった。

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