「肉じゃができましたよ」

声をかけても返事が返ってこないのでそちらを見れば、ソファに背を預けて寝息を立てる、無防備なローさんの姿。

「ローさん?」
「…」

つん、頬をつついても動かない。思わぬ長旅(?)で疲れたんだろう。…いや疲れたのはあたしのほうだ!朝起きたらいきなり知らないひとが寝てて…って本来通報してもいいところだし。
(あれ、通報?)
「!」
そうだ!今ならローさんは夢の中だし私が殺される心配もない。ポリスメンを呼んで引き取ってもらおう。
そうすれば私の日常に平穏が戻ってくるし、危険と隣り合わせの状況にもおさらばできる!こんな出会いって百害あって一利無しなんだから、まさに良い事だらけで

いいことだらけな、はずで。


「……」

わたしのごはんを美味かったと言ってくれた、ローさん。
怖いオーラを漂わせてるわりにクマが好きな、ローさん。

まだ一日しか経ってないのに、わたしはもう色んなローさんを知ってる。不機嫌な顔もご機嫌な顔も。ドSで鬼畜だけど、優しいってことも知ってる。
「…う、うむ…」
今日はデンジャラスでとっても疲れたけど、でも、楽しかった…気がするから。
私は悟って溜息を吐いた。
むり、わたしこの人のこと追い出せないよ。

「ローさん、起きてください」
「…あ?」
「寝起き怖!…肉じゃができましたよ」
「…ああ」
「…食べますか?」
「食う」
この人が出ていくまで、気長に待とうと思った。

「(何だ、通報したら斬ろうと思ってたが。…心配ねぇらしい)」
ローの心の呟きをなまえは知らない。








カチャカチャ、食器を洗いながらふと時計を見ると、針は11時54分を指していた。

「上がったぞ」
「あ、お湯加減はいかがでしたか」
「調度良かった」
「そうですか、それはよかッギャー!」
「何だ煩ぇな」
「う、うるうるさくないですよ!何ですかその格好!バットオブハレンチ!」
「お子様には刺激が強すぎたか」
「いいからとにかく何か着てくださいいい」
「暑い」


上半身裸のローさんの言い分は実に勝手だけど尤もだと思ってしまった私は女として終わっているのかもしれない。いやそれにしても!だ。


「ここが女の子の家だということを理解してくださってますか!」
「うっかりしてた」
「うっかり…」
「だが、まあ」
「うきゃ」
するりと腰に巻きついた手によって距離が一気に縮む。
お風呂上りの火照った体温が服越しにも伝わってくる。

「悪くねぇ反応だ」

すぐ目の前にあるニヒルな笑みにゆでダコ状態の私は、取り合えずこの状況を打破すべく手に握っていた泡だらけのスポンジを投げつけたのだった。
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