「オイ!起きろ!オイ!」
「.......」
「あっ起きた!オレはチョッパー、海賊だ!おまえがなまえ、ギャーー!何すんだヤメロ!はなせ!」
「たぬきちゃん.....」(ぎゅっ)
「タヌキじゃなくてトナカイだ!!!」
尋ね人8/チョッパー(海賊・船医)
「おれ、皆が言ってたことなんとなく分かったぞ」
布団の中で私に抱きしめられたままのチョッパーが言った。
「なまえってやつはかなり警戒心が薄くて大体ふとんにくるまってて、オレ達海賊をちっとも怖がらないって」
「それにしてもチョッパーちゃんかわいいね」
「話きけよ!!」
言葉を話せる動物とは、やはり向こうは何でもありだ。彼との出会いで行きたさが10倍くらいに増した。
「そういえばオレおまえに伝言預かってるんだ」
「ん、誰から?」
「ゾロとフランキーとサンジとウソップとルフィ」
「ほぼ全員だね」
「順番にいくぞ。まずゾロ、受け取った」
「刀かな?よかった」
「フランキーは、約束はこっちに来た時必ず伝えるって」
「了解。律儀だ」
「サンジは.......あー、ごめんな。長くて忘れちまった」
「しょんぼりチョッパーもかわいいね」
「なんかそんな感じのこと言ってた。ウソップは新しいポップグリーンやるって。ハイ」
「ありがとう。なにこれ。種?」
「キケンバクバク草だって。なんだろうな?」
「キケンそう。ベッドの下に置いとくね」
「ルフィは、肉!」
「暗号?」
後半ほとんど意味不明だったが、皆元気そうだ。
くすくす笑うとチョッパーが帽子の影からこちらを見上げた。
「なまえは嫌じゃないのか?」
「何が?」
「毎朝オレ達が、こんなふうにお前の部屋に来て」
私は、そういえばと目を瞬かせた。
ルフィが初めて来た頃はもう少し動揺してたけど、今は全部慣れてしまったように思う。
その理由を、私はなんとなく理解している。
「私、本当は1回死んでるの」
「え!!!なまえオバケなのか!?」
「ちがうよ!暖かいでしょ?」
「.....うん。あったけェ」
「1回拾った命なの。だからね」
「だから死んでもいいっていうなら、おれ、怒るぞ」
私の手をさわさわとしていたチョッパーがキッとこちらを睨み上げる。真剣な表情に驚いたが、少しして胸に湧いたのはくすぐったい嬉しさだった。
「ちがうよ」
一度死んで神様に喧嘩を売った時、私は自分が無敵だと思った。
今までの内気で何も言えなかった私はきっとあの時に死んだのだ。だから、
「わたしもう怖いもんなしなの。誰にだって負けないから、こうやって布団で皆を迎え撃てるんだよ」
チョッパーをいっそぎゅうっと抱きしめる。
彼は呆れたようにしていたけど、照れてつっぱねるのは止めたらしい。私の頭をぽんぽんと叩いてくれた。
その甘やかし方がかわいくて、チョッパーのお腹があたたかくて、私はふかふかに顔を埋めて眠ってしまった。チョッパーも寝てしまったらしい。お昼頃私に起こされたチョッパーは大慌てて飛び起きて、カバンに入っていた包帯やら何やらを全部ベッドの上にひっくり返してこう言った。
「もし怪我をしたら、これを使って治すんだ!なまえに渡すつもりで持ってきた。おれは医者だから」
「えぐ、帰らないで.....」
「なぁーー!!泣いちゃダメだ!!」
チョッパーは私の涙をタオルでゴシゴシ拭って、両手を握りしめてくれた。チョッパーも涙目だった。
「海で待ってるから、きっとまた会おうな!」
皆と同じように約束をして消えたチョッパー。
私はしばらく呆けて、それからチョッパーに貰った医療道具をクローゼットに閉まった。寂しかったけど、不思議と約束が募るたびに私の中には別のものが降り積もっていったのだ。
「.....また会いたいなぁ」