「おい起きろお前!」

元気のいい声で叩き起こされる。え、何事?私ひとり暮らしなんですけど。合鍵託せる友人も彼氏もいないコミュ症ニートなんですけど。
この麦わら帽子を被った男の子はどなたですか。


尋ね人1/モンキー・D・ルフィ(海賊・船長)


「俺はルフィ、海賊王になる男だ!」
「………ルフィ?日本人じゃないの?」
「ニホンジン?よくわかんねぇけど、生まれはイーストブルーだ!」

からから笑うルフィ。
何がどうなってこうなったのか、全く覚えがないと言ったら、そんなこともない。
ただ、ひどく現実離れした話では、ある。

「ルフィ、海賊王になるって言ってたけど、もしかしてあなた海賊なの?」
「ああ、そうだぞ!仲間もいるんだ!」
「………」

甦るのは昨晩の出来事。
会社に辞表を出しに行った後、車と衝突事故を起こして病院に搬送された私は、気絶している最中、神様にあった。
………頭がおかしくなった訳じゃないから。いや、確かにそうは言い切れないけども。

そこで、内容は割愛するとして、神様と口論になった。思えば結構な悪口もかましていたはずだ。ぶちギレた神様は私に向かってこう言い放つ。

"そんな貴様には天罰をくれてやる!今から100日、貴様の隣には毎朝あらゆる危険が横たわるであろう!"



海賊=危険。
てことは、これから毎日、起きたら隣に海賊がいるということだろうか。え……そんな呪いある?

「なあ、何でそんなすみっこに居るんだ?」
「あなたが危険だと判断したから」
「ふーん。なあ、お前何て名前なんだ?あとここどこだ?」
「………私は、なまえ。ここは私の部屋だよ」
「これなんだ?」
「携帯だけど」
「どーやって使うんだ?」
「電話したり、写真を撮ったり」
って何懇切丁寧に説明してるんだ私は。
ルフィは物珍しそうに携帯を見ている。まさか初めて見たんだろうか……。

「不思議だなぁ、おれ確か、甲板でウソップと釣りしてた気がすんだけど」
「ウソップ?」
「俺の仲間だ!」

ししっ、と笑ったルフィ。彼は自分を船長だと言い、他にもいるらしい仲間のことをそれはそれは嬉しそうに話した。
聞いているうちに、彼が危険かもしれないなんてことも忘れて、その話に聞き入ってしまっていた。

「それで、そのグランドラインって海を、ルフィ達は冒険しながら渡ってるんだ……」
「ああ!もう冒険は最高だぞ!!なまえも俺の仲間になれよ!!」
一緒に冒険いこう!

目を輝かせて私の手を握ったルフィ。
朝っぱらから、すごく壮大な話を聞いて、私も頭がぼうっとしてしまったんだと思う。
気がついたら、うん、と頷いてしまっていた。

ルフィは嬉しそうに目をほころばせて
「約束だぞ!」
と言うと、突然消えてしまった。

「えっ!?」

どれだけ辺りを見回してみても姿はない。
いつも通り、生活みのない部屋がそこにあるだけだ。

「……………疲れてるんだ」

私は頭をかいて、今一度ベッドに潜った。
しようと思っていた二度寝が中々できなかったのは、ルフィのあの太陽みたいな笑顔が忘れられないから……かもしれない。
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