トラファルガーさんは…じゃない、ローさんは、長い刀を鞘から取り出してぼうっと眺めながら呟いた。

「…暇だな」

暇だと言われましても。わたしはさっきから視界にチラつく例の鋭い刃から目を逸らすことで精一杯だ。やめてって言ってるのに…!銃刀法違反の法律に守られて育てられた日本の子供達がどれだけチキンで、そういったバイオレンスに馴れていないのか知ってるんだろうか。もうローさんの怖さは留まるところを知らない。
ブツブツ思考に浸っていた私に向かって、バイオレンス・トラファルガー(なまえ命名)はとんでもない事を言ってのけた。

「解剖させろ」

「ぎゃー!ポリスメーン!」真顔がまた怖いから思わず涙目での叫び声である。
「別に良いだろ」
「冗談に聞こえません」
「本気だ」
「ぎゃー」
「安心しろ。飽きたらくっつけ」
「いやだあああ」

もうやだ!何がやだって、この人ならやりかねないって前提があるから、可能性を否定できないのだ。とにかく、これ以上ローさんを暇にさせておいたらアレだ。…バラされる。
そこでなまえは、おずおずと口を開いた。


「お買いもの、行きますか…?」

泣く泣く絞り出した提案は「面倒臭ェ」と突っぱねられるものと期待していた。なのに


「ああ。暇つぶしにもなりそうだ」







不本意だけど。本当に、不本意なのだけれども…。彼がここに居留まる気でいるのなら、生活用品がもうひとセット必要ということになる。とくに重要視すべきはアレだ…服。


「ということでお店に来たのはいいのだけど」

私は隣で、物珍しそうにあたりを見回す彼を見た。見た。と言っても身長差があるため、私が若干見上げる形になる。
あ。もちろん刀は置いて来ていただいた。


「どうですか?何か目を引くものでも………ローさん?」
「…ああ」

ローさんの視線の先にいたのは、白くま…の着ぐるみ。やばい…!めっちゃ見てる!完全に目をひいてる!!

「…おい、なまえ」
「へ」

「あれ。いくらだ」


非売品なんです、とでも言っておこう。

ある程度の買い物を済ませると、運動不足な私はすっかり疲れ果ててしまい備え付けのソファに腰を下ろした。両腕の荷物が重い。どうやら彼は英国紳士とはかけ離れた分類の人間のようで、わたしが重い荷物を持ちながらヒーヒー歩いているのを楽しそうに見ている。世に言う鬼畜というやつか。


「つかれたな。帰らねぇか」
「その台詞はもれなく全て私のものです」
「意見一致」
「あ」


ローさんはわたしの両腕からするりと荷物を抜き取って歩き出す。持って…くれるらしい。
ううーん。全く行動が読めないひとだなぁ…ドSだったり優しかったり、さっきまで早かった歩調もなぜだかわたしに合わせてくれているし…。
予測不可能とはきっとこの事だ。

「憔悴しきったお前を見てんのも悪くないが、そろそろ飽きてきたんでな」
「…」

理由はここにあったらしい
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