「昨日、俺は元の世界へ戻る方法を知るためにここへ来た」


―――


「…ここか」

七瀬の地図の通りに細い道を進むと、さびれた店に辿り着いた。
客の影など少しもないこの小さな店に潜む気配。直感的に、それが探し求めていた人物だと悟った。

「…珍しい客だな。」
店の敷居を跨ぐより先に、中から声がかけられる。

「よくここを見つけたもんだ。…誰に聞いた」
「……お前がヤマトか」

まるで影から生まれたかのように、音もなく姿を現したサングラスの男。
"こっち"に来てから、こんなような奴に会うのは初めてだと頭の片隅で思った。

「人に名を聞く時は、自分から名乗るのが礼儀だろ?」
「…俺は海賊だ。礼儀を守るいわれはねぇ」
「だろうな。…――トラファルガー・ロー」

思わず口角が上がった。
「…知ってんじゃねェか」

間違いねぇ。――こいつは、戻る手がかりを知ってる。


「お前、トラベル島に足を踏み入れたんだな。」
「…!!」
「やっぱな。毎年この時期になると、こっちに何人か迷い込んでくる」

カウンターの向こう側から椅子を持ち上げたヤマト。それを受け取って腰を下ろせば、奴は懐から取り出した煙管に火をつけた。

「随分と古いのを使ってんだな」
「ん?これか」
細やかな装飾の施された煙管は、同じものがショーケースの中にも置いてある。
「客が買ってかねぇもんだから使ってんのさ」

ヤマトは口から細い煙を吐き出した。
俺が黙って話を促せば、やがて昔を思い出すかのように目を細めて話し始めた。

「俺のところにも昔、異次元から来たという奴が現れてな。まあ一週間もしないうちに帰ってったんだが…」
「帰れんのか!?」
「ああ。帰れる。」
「………」
「あの島から来たってんなら、お前も何か盗ったんだろ」

ニヤリと促された俺は、ポケットの中でビー玉を弄び、首をかしげた。

「人聞きが悪ィな…」
「違うのか?」
「…いや。」
まあ、俺の場合は本当にただ「取った」だけだが、

「海賊が稼業に専念して何が悪い。」
それをそのまま言うのも癪だ。そう思い適当に言葉を繕えば、ヤマトは笑って肩をすくめた。

「悪くはねェ。『海賊』なら、そうあるべきだ」
「……知った口ぶりだな」
「あァ。これまでに何度かお前のような輩を見てる」
「だから海賊にも許容があるってわけか。…フ、なら、」


俺は片手を仰向けにして、能力で刀を取り寄せた。
刀身を抜き、切っ先をヤマトの首に宛がう。

「俺は海賊らしく、お前を脅して"情報"を奪う事にしよう。…ヤマト」
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