私はあたたかなコンクリートに寝っ転がると、形を変えながら風にたゆたう雲を見つめた。

「…あ。」

ベポみたい。
熊のようなシルエットの雲を見て、会ったことも無い彼のクルーを思い浮かべた。
「…」

(せっかく出会えたんだ。)

奇跡と奇跡が相まって、ありえない現象がいくつも起こって、ローさんはこの世界へやってきた。
いつ帰ってしまうのかも分からない。
もう二度と出会えないかも分からない。

そんな相手と出会っておいて、こんな別れ方は、つまらない。

――キーンコーンカーンコン

「…よし!!」

ぐだぐだしていてもはじまらない。
めそめそしていてもはじまらない。

なら、やることはひとつ。


「探しに行こう…!」


***

「七瀬さん!」
息を切らして彼女の教室に飛び込んだ私を、先輩方が好奇の眼差しで見つめている。
普段ならひしゃげてしまいそうな心だったが、今はまるで気にならなかった。

「あら、あなた」

窓側の席で友達と話していたらしい七瀬さんが私に顔を向けた。
私は彼女に駆け寄り、その机に両手を置いた。

「ヤマトさんは、…ヤマトさんの居場所を教えて下さい!」
「や…ヤマトの?」

七瀬さんが持ってきてくれた地図はローさんが持って消えてしまった。ローさんがどこにいるのか、知る手がかりをもっているのはきっとその彼なのだ。
しかし七瀬さんは目線を下げて、首を振った。

「出来ないわ」
「!!…ど、どうして…」
「……昨日、トラファルガー君に頼まれたのよ。」
「ロー、さんに?」
「ええ。…あなたがヤマトについて何か聞きに来ても、何も教えるなって」
「ダメです!」
「だ、…だめ?」
「だめです。教えてください、七瀬さん…!このままじゃ」

そう、このままじゃ…

「わたしが、
 後悔します」
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