次の日、昨日の宣言通りローさんは学校ではなく例の『やまと』と呼ばれる人間のところへ向かい、私は学校へ向かった。
学校までの道のりは徒歩で15分ほどだ。
「…」
何だか妙に物寂しく感じて、鞄からiPodを取り出す。
私の寂しさを紛らわせる方法は大半がそれだったので以前までは愛用していたが、ローさんが現れてからはぱったりご無沙汰だった。

わたし、ローさんに依存しすぎじゃないだろうか

曲を選択しながらそんな事を思う。
ローさんは異世界から来た人だ。やがて元の世界に戻るのだ。
私はまた一人に戻る。
覚悟しておかなければいけないのに、

「……」

心のどこかで小さな罪悪感が揺れた。
このままずっとこちらの世界にいてくれたらいいのに、なんて、…本当にごめんね、ローさん。



「あれ?なまえ、トラファルガー君は?」
「あ、ちょっと用事あって…遅れてくるって」
「へえー」

「なまえさん、今日トラファルガー君休み?」
「ううん、後から来るよ山本君」
「部活今日からだよね?」
「茶々入れ、じゃない、応援行くからな」
「言っちゃってるよ飯島君…」

「なまえ!トラファルガーはまたサボりか!!」
「い、いや今日は用事があるらしく…遅れて来ます」
「じゃあお前、今日やつが当たるはずだったこれ解いてみろ!」
「(げぇー!)」

「あれぇ??ロー君いなくなーい?」
「えー!なんだぁ、せっかくクッキー作ってきたのに」
「ホントホント、何でいないんだろうね。…あ、そうだ、あの子に聞いてみる?」
「あの子っていっつもロー君と一緒にいる?……あ!逃げた!」

「ちょっと!なまえちゃん!?」
「ローさんならいませんよぉぉ」
「な、何泣いてるの…!」
「ヤマトさんのところへ行ったんです…もうすぐ来るころかと」
「そう。ならいいのよ」


「なまえさん!!」
「い、池山君」
「今日トラファルガーいねーんだよね!?じゃあ今日の放課後オレとゲフゥッ」

池山君の頭のてっぺんに何者かによる(というか、最早誰がやったかとか明白だけど)踵落としが炸裂。

「あ。…おかえりなさい、ローさん」
「ああ」
「………?」

なんか、あったのかな。

ローさんが来て直ぐに最後の授業が始まり、何があったのか聞きそびれてしまった。
延々と続きそうにも思える数字の羅列から目を離して、横目でチラリとローさんを見る。

――何だ

気配だか視線だか殺気だかには敏いローさんは、いつもだったら直ぐにこちらを向いてそう言うのだが、今日は頬杖をついて黒板を眺めているばかり。
ノートはいつも書いてないけど、今日のぼんやり加減にはどうにも違和感があった。
チャイムが鳴り、教科書を閉じる。

「…あの、何かあったんですか?」

ローさんは私をチラリと見あげると、すぐに視線を反らした。一度こちらに向いた視線の冷たさに私は思わず一歩慄く。ローさんが言った。

「なまえ」
「、は……い」

まるで

「俺に関わるな」

まるで、初めて会った、あの日のような声で。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -