「じゃあその新聞も、ローさんの世界のものなんですか?」
「そうだ。普段は鳥が持ってくる」
「(と、鳥か…すごいな)」
「だが…分からねぇ。なぜこの新聞と手配書が家の前に転がってるんだ。俺がこの世界に来た方法と関係してるのか…?それとも」
「あ、あのう、ローさん」
「何だ。俺は今思考にふけってる…話しかけるな」
「そ、そうは言われましても…」


なまえはチラリと前を見て、直ぐに目を伏せた。そしてしばらくして次は辺りを見回し、また目を伏せる。

「…ま、周りの目が痛いんですが」
「お前がどうにかしろ」
「無茶振りキタ!」

新聞を広げながら机に足を投げ出しているローさん。ローさんは一時間目から今、4時間目半ばまでこうしてずーっと新聞を読んでいる。
私は話し相手がいなくてつまらな……じゃない、いや、つまりはしないけど。
でもそれよりもっと…色んな方々からの視線が突き刺さって、そのたび私は曖昧な笑いを浮かべなければならなかった。
昨日の事もあるんだろうな、うっすらとそう思うと、殊更にいたたまれなくなってしまうのだった。

ーーーーーーーーー

視聴覚室への移動中、ローさんの分の教科書も手にした私は俯いて歩いていた。もはやこの状況に「私はパシリか!」のツッコミひとつも生まれなくなったのは悲しい。パシリなのだ。

こそこそ

「ほら、あの子」
「え?」
「付き合ってるって噂だよ。トラファルガー君と」
「えええ!?あの転校生の?」
「そう。だって昨日ね」

こそこそ

「……」

ほら見ろー!それ見たことかー!ローさんが新聞に夢中になってる間にもね、私達には好奇の視線が注がれているんだよ!
こんな時ばっかり素直に欠席理由言ったりするんだから。もう…もう!ああ私の平凡なスクールライフが。

廊下歩きながらも新聞から目を離さないローさんに恨みがましく視線を送れば、すっと伸びてきた手に痛烈なデコピンをお見舞いされた。
「……」
視聴覚室につき、今度こそ何もやる事がなくなった私は、白い長机に顎を乗せて今朝の事を考えていた。
――あの手配書は、本物だろうな。
2億ベリーってこっちの世界のいくら位になるんだろう。同じだったらものっそい額だ。
デットオアアライブ。英語は苦手だけどそのくらい分かる。生死問わず、だ。生きてても2億円、死んでても2億円。
それだけの価値がある人ならしょっちゅう狙われていたに違いない。ローさんの話によく出てくる、ベポや、ペンギンや、キャスケットみたいな仲間達と一緒に返り討ちにしていたんだ。

すごいなぁ。だからあんなに強いんだろうな。相手の海賊達や、海軍の人達はひとたまりもなかったに違いない。いや、でも向こうの人も意外と強かったのかも。
ローさんの苦戦している姿はあまり想像できなくて、途中であきらめた。

「あ。」

そこでようやくローさんが新聞から目を離してこちらを見ている事に気が付いた。

「ずいぶん考え込んでたな」
「新聞はもういいんですか?」
純粋な疑問だったが、皮肉にとられるのではと後から思ったが
「ああ」
軽い返事だったから、その心配はなさそうだ。
「で?何考えてたんだ」
「…ローさんのべらぼーな強さと賞金額について、です」

ローさんは笑った。私もつられたようにして笑う。
そうすればローさんはここにいるのだと実感できる気がした。――私は、ローさんが違う世界の人だと認識することを嫌がっている自分がいることを知っているのだ。

(かっこわるいな、わたし)
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