23


今にも嘴に突き刺されそうになっていたエドワードを間一髪救いだし(いや、私マジヒーロー!)再びバデスちゃんの足の間を潜り抜けることに成功した。
数十歩先にあったゴールには、もうすでに何人かのエントリー者たちがいる。

――1位、取れなかったなぁ

がっかりしつつ、戸口から続々と入ってくる通過者のパートナーの中にキッドさんの姿を探す。…ない。
ああ、もう最悪だ。絶対嫌われた。



「…海賊」
「ぁへぇ…?」
「(何だ今の)」
「なにさ」
「……お前は…、」
「あ。なぜ助けた、なんて言わないでね」
疲れたようにそっぽを向いてなまえは言う。実際えらく憔悴しきっていた。

「戦いにおいて、敵の敵は味方なんだから」
「…!!」


驚愕したエドワードが次の言葉をかける前に、彼のもとに一人の女性が駆け寄った。

「エドワード!!」
「…ッサリー!」

ひしと抱き合う二人。私はとっくに蚊帳の外だ。

「情けない姿を…見せてしまった」
「そんなことない!すごく素敵だったわ」
「サリー…」
「エドワード、無事でよかった…!」

「…」

リア充爆発しろ。





その時、急に辺りが騒がしくなった。振り返ってみるとパートナー用出入り口にキッドさんがいた。
ただその雰囲気は異様に重々しく、武器を一つたりて持っていない今でも人の一人や二人簡単に殺せそうな勢いだった。正直言っていいだろうか。メッチャ怖い。さらにぶっちゃけていいだろうか。メッチャかっこいい。怒っててもカッコいいってどういうこと。


「……オイ、テメェ」

ふざけてる場合じゃないな。(や、本気だけど)
私はちょっと命の危険を感じた。


「…キ、キッドさ…ごめんなさ、ぐひゃ!」

キッドさんの振り下ろされた拳は私の脳天にゴチンと炸裂した。冗談抜きで痛い。痛いいい…!!
一瞬で涙ぐむ私の胸ぐらを掴みあげ、ドスの効いた声で一言。

「今のは、テメェの所有者としての一発。―――…で」
「っ」

再度迫ってきた掌に身をすくめて自己防衛。ジンジン痛む頭を押さえて目をきつく瞑ると、鋭い追撃の変わりに、あたたかな…


「こっちは、船長としてだ」

「え……」

ぱっと拓けた視界に映ったのは、キッドさんのコートのフワフワ越しに見える後ろの景色。血まみれの腕に触れないように気遣われながら、私はキッドさんの腕の中にいた。

「したいっつってたろ」

キッドさんの顔は見えない。

「わ、たし……1位じゃない」
「知ってる」
「い、いい、の?」
「ハッ」
「…キッドさん」
「………

 よくやった。なまえ」

障害物競争 エントリーナンバー31番・なまえ、キッドペア【通過】

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