「………ねえ、ウソップ君。」
「何だ?なまえ」
「あそこで喧嘩してるのって、三年生のユースタス・キッド先輩だよね」
「そうだな。近寄らないどこうぜ」
「私達一年生には縁もゆかりもない人だよね」
「そうだぞ。おっかねー…早く焼きそばパン買ってルフィ達んとこ戻ろうぜ」
「……」
「おい、どうしたんだよなまえ」
「わたしさ」
「あん?」


「こいにおちました。」





FULLPOWER!LADY!


「―――いやいやいやいやいや!だめだろ!無理無理無理」
「先教室戻っててよウソップ君」
「戻るかァ!!お母さんはゆるさねーってか危なすぎるだろあんなの!」
「なんか声が好きかも。しびれる」
「じゃあ顔よく見ろよ!閣下じゃねぇかよ!」


購買の真ん前で繰り広げられている喧嘩を、慄きながら見守る野次馬集団の中で、なまえとウソップは身を縮めながら言い争っていた。

「いいか、なまえ!幼稚園の頃からの親友の俺から言わせてもらえば」
「うんうん」
「お前は恋を知らない!」
「なによ、自分はカヤちゃんがいるからって」
「そうだ!だから恋を知る男!この俺ウソップの話を……って、オイイイ!!」


ふらりふらりと人の間を抜けていくなまえは、ぽいっとそのまま人垣を越え出てしまった。ウソップは手で顔を覆いながらその行き様を見守る。(ああー!あいつ何する気だよコエエ!!)



「あ?何だ、テメェ」
「こんにちは」
「あぁ?」

突然現れた女子生徒に、ユースタス・キッド先輩ご立腹のご様子。

「私、1年B組のなまえっていいます。キッド先輩、彼女いますか?」


ウワー!!単刀直入だなまえ!さすが空気読めない女!
ほら見ろユースタス先輩もポカンだぞ!!とまあ、ウソップの心の声などなまえの耳には当然届かない。


「どっか失せろ、ガキ」
「答えてやればいいだろ、ユースタス屋」
「あぁ?」

口端の血を舐めとって、なまえの前に身を屈めたのは同じく3年のトラファルガー・ロー。今の今までキッドと喧嘩をしていたのもこの人物だ。

「おい、なまえ」
初対面にもかかわらずにいきなりの名前呼び。動じないなまえ。
「はい」
「お前はこいつに彼女が居ると思うのか?」
「………居たら、いやだなとおもいます」
「クク、へえ。……よォ、ユースタス屋。こいつはどうやらお前のこともがむがっ」
トラファルガーの口を慌てて抑えたなまえ。
最初から最後まで真顔である。
「キッド先輩」
なまえはもう一度、真剣な表情でキッドに尋ねた。(何故かさっきまでの喧嘩ムードは、なまえの謎の告白モードに飲み込まれてしまっている。我々野次馬組も然り。Byウソップ)



「彼女、いますか」


十分な間を置いて、キッドは「いねぇ」と一言答える。なまえはぱあっと顔を明るくしてローの口を離した。

「好きです!彼女にしてください!」
「は、はぁ!?」
「恋人にしてください」
「ふざけんな!!大体、俺は彼女なんざ」

なまえは、自分よりかなり大きな体躯を持つキッドに、慄くことなく近付いてその背中に回った。
「ちょっと屈んでもらえます」
「……」
わけが分からないという表情で、わずかな困惑すらも滲ませながら咄嗟に腰を屈めるキッド。
なまえは、キッドがブレザーの中に着ているパーカーのフードに触れると、後ろから内側の布地を押し出した。満足そうに離れるなまえ。


「………何しやがった」
「ふふ。キッド先輩の彼女候補になりたくて」

そこで意味を理解したらしい、ローが思いっきり噴き出した。

「オイ…何だトラファルガー!!」
「ふ、ぶふふ……ユースタス屋。お前しらねぇのか、ソレの意味」
「ソレって何だ、あ゛ぁ!?」
「フードだよ。小学生の頃流行ったろ」

それでもまだ理解に至らないらしい。笑いをかみ殺しながら、ローはキッドの後ろに回り、満足そうななまえの頭をぽんっと叩いた。


「フードがひっくり返ってんのは、
 "彼女募集中"のアピールだ。…な?」


こくりと頷いたなまえの笑顔は、そりゃもうキラキラしててな。俺は黙ってユースタス先輩に両手を合わせたよ。(ウソップ後日談)



「キッド先輩、わたし、あなたと幸せになりたいです!」


あんなに可愛い笑顔、幼稚園の頃から付き合ってたこの俺でも見たことねぇよ。たぶん、アレが恋する乙女の顔っつーやつだな。――ユースタス先輩もそれっきり押し黙っちまってよ、まあ例にもれず真っ赤だったわけだが。(あんなストレートに告白されたの初めてだったんだろうな)あいつルフィ並に単純で、加えて一途だから、きっと惚れられちまったら終わりだぜ。うん、とりあえず先輩、ご愁傷様。

I’m FULLPOWERLADY
あ、キッド先輩逃げた。
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