「スパンダムくんあっそぼー!」

長官室のドアをノック無しに開けて入るも、いつものようなお咎は今日は聞こえてこなかった。はてと首を傾げれば理由はすぐに見つかる。

「…寝てる」

散らかった書類の山を掻き分けて、でもそれをデスクから落とさないようにつっぷして寝ている。まあなんて器用だこと。敬意を賞して額に肉とでも書いておいてあげようかと考えたところで、止めた。

ちょうかん、最近がんばってたしな


一週間ほど寝る間も惜しんで仕事に励んでいたのはCP9一同存じ上げていたのです。(ぎゃあああ見てルッチあのスパンダムが!)(天変地異が起こるな)(セクハラだわ)
おっと今のは長官が仕事をがんばり始めた1日目のハナシ。


「…お疲れ様でした」

そう言って、ソファに置いてあった毛布をスパンダム長官の肩にそっとかけた。割に幼い寝顔に少し笑えば、はちりと薄く目が開いた。


「長官、起きましたか?」
「…ああ」
「お仕事が終わったならベットで寝てください。風邪ひきますよ」
「そうする…が。その前に」

長官はぼんやり眠そうにしながら机の一番上の引き出しから箱を取り出して、ひょいと私にほうった。


「誕生日、だったろ」
「…!」
「俺が起きたらどこへでも好きなとこ付き合ってやる」
「あ、お…おやすみなさい」
「ヴァカ」
「え?」
「お前も寝んだよ。来い」

ぼふんとベットに潜りこんでさっそく夢の世界に入り込む長官の隣にまるまって、手の中のプレゼントを抱きしめた。中はまだ見ない、楽しみにとっておこう…!
それにしてもこのひといつもはボケでアホなのにこんなときは、たまらなく大人に見えていやだ。こうして仕事に励んでいたのも、わたしと過ごす午後の為だった、と過信してもいいのなら、わたしはとても幸せ者だ。


「ありがとう、スパンダム」

そっと寝ている彼の額に唇を落として、わたしは口の中で好きだよと唱えた。
やさしいおとな

(たとえわたしの誕生日が昨日だったとしても、ね)
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