「ぐううぅ…」

「…」

「ふ…ぐうう」

「…」

「ぐ、う…いうがううう」

「煩ェよい…」

「まる、ご…ぎぐぐぐ」

生理痛らしい。女っつーのは大変だな。なんて他人事のように考えながら布団に入ったのが1時間前。
生理痛が酷くて眠れないこいつと、
隣が煩くて眠れない俺。

「いい加減薬飲めよい」
「む、むり…生理のたびに飲んでたら身体に悪いっておばあちゃん言ってた」
「お前おばあちゃんに忠実だな」
「おばあちゃんの知恵袋…っ」

お腹を押さえてぐっと奥歯を噛みしめている様子のなまえ。顔色は悪く、どうやら本気で辛いらしいと気が付いた。

「さすってやろうか?」
「…」
素直に頷いたなまえは弱々しく俺の手を取り、自分の下腹部に添えた。
「…」
辛そうに眉を寄せて目を閉じるその表情と自分の手の位置に一瞬むらっときたが、ここは大人の理性で抑える。
(落ち着けよい、俺。こいつはもう今それどころじゃねぇんだからな。)

マルコは昔サッチから聞いた「男にとって女の生理の痛みは泣く程だ」という話を思い出し、月に一度もそんな日が来るのかとなまえをものすごく哀れに思った。
マルコがさすり続けていると、なまえがふと目を開ける。

「マルコの手、あったかい」
「…気持ちいかよい」
「うん」

「…」
こいつ誘ってんじゃねえだろうな。

「あーなんか、楽になってきたかも」
「さすっといてやるから寝とけ」
「え、でも」
「煩けよい。お前が隣で唸ってたら、俺も眠れねェんだ」
「…ふふ」

一瞬破顔して目を閉じたなまえ。俺は手の動きをゆっくりしたものに変えながらぼんやり愛らしい表情を眺めていたが、形の良い眉がきゅっと眉間にしわを刻み、しまいにはポロポロ泣き出すもんだから柄にもなく慌てた。


「そ、そんなに痛ェのかよい」
「ち…ちがうの」
目を真っ赤にしてこちらを見上げるなまえは首を振った。

「マルコ、ひさしぶりに帰ってきたでしょ…、だからね、久しぶりの優しいマルコがうれしくてね」

「…」

「でも生理も痛くて…。ちゃんとお話したり、いちゃいちゃしたりできなくて、ごめ…んねぇ…」

まさかそんな事を気にされているとは思いもよらなかったマルコ。
確かに、最近は仕事続きでここへ帰ることも少なかったが、帰った時のなまえは既にソファでダウンしていたのでそれを察する事も出来なかった。
「…」
途端にこみ上げる、愛らしさ。

マルコは自分より一回り程小さな体を力いっぱい抱きしめて、自分を呼びかけた唇を啄んだ。
「ん、……マルコ」
「…そんな事、気にしねぇよい」
「でも」
「――休みとった。1週間」

パチパチと驚いたように瞬きするなまえ。マルコはにやりと大人っぽく微笑んで、彼女の耳元でささやいた。

「明日から、いやってぐらい可愛がってやるよい」
針と糸で縫いつけて
903903 マルコと同棲
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