「お前、新星高校のなまえだな」

さて皆さんに問題です。
もし道端で、明らかに悪そうな男達に名指しで囲まれてしまった場合、どうしたらいいでしょう。
1、天然ぶって「や、やだ、もしかして告白…?」などとほざいてみる。
2、眉を寄せて「オウ?喧嘩なら買うぞゴラ」と凄んでみる。
3、悲鳴を上げて助けを呼ぶ
4、


「違いますけど」

私が片手を振って応じると不良男達の目が点になった。ボソボソと声を交わしているのがわかる。え、こいつちげーの?何だよ誰のミスだよ。もうこの際こいつでいいかヤっちまおうぜ。いやこいつでヤっても意味ねーだろ。

おいおい何だ後半のやつら、結構物騒なこと言ってますけど。
その時、ドルンドルンとエンジン音が聞こえてきて、壮絶な嫌な予感が私の体を駆け巡った。


「ア?んだテメェ等通学の邪魔だ失せろ」

道のど真ん中にいた私と不良達は、一斉にその声の主を見る。
「なっ」
「ユースタスだ!!」
「クソ…まだ人質も捕まえてねぇってのに」

「あ?」
黒いゼファーに跨った派手な頭のそいつは、学ラン群の中央にいる私を見て、反応を見せた。

「なまえじゃねェか。何やってんだ」

お 前 が 何 言 っ て ん だ 空 気 読 め !

「やっぱりテメェがなまえじゃねェか!」
「騙しやがって」
「とっ捕まえろ!」

ばかったれキッド!つーか絶対あんたが絡んでると思ったわ!
襲いくる不良たちの脅威に固まって怯えていると、聞きなれた低音が耳に滑り込んできた。
「屈め、なまえ」

私の体はあくまで従順にそれに従う。
今まで超えてきた死線の数がそうさせるのか、キッドの有無を言わさぬ伝令に体が対応しているのかは定かではないが、屈んだ私の頭の上を見事に数人の不良が飛んで行った。仲間を巻き込みつつ。

頭を抱えていた私が顔を上げると、蹴り終えた姿勢のキッドがニヤリと笑ってゴーグルを額に押し上げた。

「こいつに手出すとは命知らずな奴がいたもんだな」
「クソッ…!!」
「怯むな!人数で勝ってんだ!」

「テメェ等が何人束になって来ようが、結果は変わらねェよ」
そこからはキッドの猛攻だった。
襲いくる彼らを取っては投げ取っては投げ。誰一人として私とキッドに触れないまま、新星町の爽やかな朝は取り戻された。


「(強い強いとは思ってたけど…)」
「さ、行くか。乗れよ」
「は?」
「だから後ろ」
「いやだよ危ない」
「ゴーグル貸す」
「ヘルメット貸せよ!」
「ね、ねェよ」

私はおろおろとしているキッドを置いて歩き出す。さっきまで不良たちを散々のしていた人と同一人物とはとても思えない。
結局バイクを押して私の隣に並んできたキッド。

「…大体、何であたしが狙われなきゃいけないのよ」
「あ?」
「名指しでこられたんですけど」
「ああ…」
気まずそうに頬をかいたキッドは言う。

「そりゃ、お前、…俺がテメェに惚れてっからだろ」
「だからか。………!!?」
「…」
「!!?」

危険を従える
(つーことで付き合え!)
(!!)
学校中、じゃねえ、町中知ってる事実を!何で知らねェんだお前!

一万打祝い おめでとうございます!芳野さん
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