「海?」「うん。」「バカじゃねぇの?」 冒頭からこんなやり取りで申し訳ない。私は今シリウスの家に遊びに来ていた。煙突飛行ネットワークでちょちょいのちょいだ。 ちなみに卿は一昨日からマグル狩り遠征に出ていて、明後日まで帰ってこないらしい。 屋敷は暇で暇で暇で、マフラーで首元をぐるぐる巻きにして雪の積もる中庭で遊んでいた私は、こう思ったのだ。 「海でパーッと泳ぎまくりたい」 「や、バカじゃねぇの?」 その時、シリウス宅の玄関の呼び鈴が鳴った。 私はにやりと笑い、シリウスはその笑みを見てすごく怪訝そうにしている。 「シーリウース君ー、あーそーぼー」 窓から身を乗り出して玄関ポーチを見下ろしたシリウスは、見慣れた3人の悪友の姿に眩暈を覚える。彼らを呼んだのも恐らくなまえ。くわえてさっきのおかしな言動…。(…まさかこいつ) シリウスは分かりきった事を、確認の為、もう一度彼女に告げた。 「今、冬だぞ。」 「魔法界はね」 「来た来た来たキター!!」 目の前に広がるコバルトブルー!水着の上に白いTシャツ、麦わら帽子、浮き輪を装備した私は一番に砂浜を駆け出した。その後ろに続くジェームズとシリウス。1、2、3で一斉に海に飛び込んだ。 「ぶは、ふー!きもっちー!」 「まさかマグル界にこんな美しい海があるとは思わなかったよ」 「俺も。つーか本当に海来ることになるとは思わなかった」 「有言実行なのでーす。がはは」 笑った私の頭にゴツンとサンゴの塊が当たった。ちょっと!目ん玉飛び出たかと思ったんですけど!浮き輪を旋回させて浜の方を見ると、目を三角にしたセブルスがわなわなと仁王立ちしていた。 「急に連れ出されたかと思えば、何だここは!」 「ザ・シー!」 「見ればわかる!」 「じゃあ聞くなよスニベルス」 「セブもこっちおいでよー!海きもちーよ!」 「嫌だ!焼ける」 プンスカ怒りつつヤシの木の下に戻っていったセブルス。そんなセブルスに近付いてドリンクを手渡しているのはリーマスだ。遠目にも少し目立つ身体の傷跡には誰も触れなかった。 「シリウス…わたしゃ悲しいよ」 「あん?」 「何なんだそのお腹!」 私はシリウスの腹筋のついた腹を指差した。 「割れてるじゃないか!」 「え……だから!?」 「シリウスは実はぽにょぷよだと信じてたのに。」 「勝手な奴だな」 言いつつちょっと誇らしげに見えるのは気のせいだろうか。「なまえ、リリーは?」尋ねてくるジェームズの腹もちょっぴり拝見したところ、いい感じに割れていた。何だどいつもこいつも。私の仲間はどこにいる! 「で、リリーは?」 「あっちでピーターと砂のお城作ってる」 「!!」 光の速さで遠のいていくジェームズを目で追っていると、私と同じように浮き輪に乗っているシリウスが「なあ」と私を呼びかけた。 「今更だけどよ、何で海なんだ」 「んー…特に理由は」 「ねェのかよ」 「ほら、寒い時にこそ鍋が食べたくなる精神ってあるじゃん」 「俺達結局暑いとこに来ちまってるんだけどな」 「あ、そっか」 「バカ」 「む」 シリウスの方へ顔を向けると、どことなく嬉しそうな横顔があった。 その流れで辺りも見渡す。 木の下ではドリンクを飲みながら読書するセブルス。その脇でお昼寝モードなリーマス。 崩れた城に埋まったジェームズとピーター。 二人を慌てて助けようとするリリー。 なんだかんだ言って、皆ここを満喫してくれているみたいだ。私も嬉しくなってこっそり笑う。 突拍子もない私のアイディアにのってくれる仕掛け人達も、リリーも、何やかんや言いつつ来てくれるセブルスも、私は大好きだった。 「よーっし今日は遊ぶぞ!」 「おう」 「シリウス、あそこの浮き島まで競争!スタート!」 「早っ、テメ!」 Winter and Summer! 新学期 「あら?あなた達休暇前より焼けましたね」 「「…」」 888555hit ホグワーツ組で冬休み(tomorrow続編) |