「皆、明日から始まる休暇で何をするか話し合おうジャマイカ!」
「僕は帰る」
「まあ待ってよセブルス」

席を立ちかけたセブルスのローブをひっぱって座り直させる。お顔は不機嫌そのものだけど、まあこんな時くらいイイじゃないかと言いたい。リクエスト系番外編だし。

「悪いけど僕も帰るよ。スニベルスと同じ空間に居たらねっとりしちゃうからね」
「うんじゃあねジェームズ」
「ちょ!何で僕は止めてくれないの」
「ジェームズの予定なんて分かりきってるからね。ぶっちゃけいてもいなくても」
「あああああああ!聞こえない!」
「どうせリリーのストーカーでしょ」
「何だって!?君、僕がそんな変態野郎だと思ってたのかい?」
「違うの?」
「違うに決まって」
「あら、なんだか珍しい組み合わせね」

ここで通りすがったリリーがセブルスの肩を叩いた。


「ねえ、セブ。あなた休暇は家に戻るの?」
「いや…戻らないつもりだ。君は?」
「私は帰るわ!ならセブ、うちへ遊びに来ない?ママとパパが会いたがってるの」
「!!!!」
「考えておいてね」

にこりと笑って立ち去ったリリー。
顔面蒼白ムンクなジェームズ。
さりげなく照れているセブルス。
この後ジェームズがどう爆発するか思考する仕掛け人3人+私。


「…決めたよ」

「?」
ジェームズは思ったより静かに口を開いた。…かと思えば、勢いよく立ち上がって拳を上に突き上げてみせる。

「僕はこのクリスマス休暇、スネイプのストーカーになってやる!!」

「ええええええ!!」
「ジェームズ!相棒!お前ついにぶっ壊れたか!?」
「ねえジェームズ、君ちょっと泣いてない?」
「そんなにショックだったんだね…」
「迷惑だ。」

「ぶっ壊れてないし泣いてない!ただショックは本当だ!だからスネイプをストーカーしてやる!!」
「どのへんが"だから"!?」
「説明してやるよ」
眉をしかめつつ切り出したのはシリウスだ。

「え、今ので分かったの?シリウス」
「何年連れ添ったと思ってんだよ」
「さっすが相棒!」
「フン。…ジェームズはこの冬中にスネイプと仲良くなってエバンスに近付き、あわよくば自分も彼女の家にお誘いしてもらおうって魂胆なんだ」
「違う!」
「違うらしいぜ」
「ちがうんかい!!」

っかしーな。とボヤくシリウスの脇で、机に拳を打ち付けるジェームズは、振り絞るような声でぼやいた。
ちなみにここは大広間。
ただでさえ異色の組み合わせが額を突き合わせているというのに、ジェームズの奇行の所為で余計に周りから人がはけた。

「スネイプに終始嫌がらせをしつつリリーの家に行かせないように阻止するんだ!僕は!」
「頭悪っ」
「なんて陰険な奴だ」
「お前にだけは言われたくないぞスニベリー!!」
「僕にそんな口をきいていいのか、ポッター」
「なっ、なんっ」


「そういえばなまえ、お前は休暇どうやって過ごす気なんだ?」
二人の言い争いは気に留めない事にしたのか、シリウスが私に尋ねた。

「私?」
「マルフォイ家に戻るんだろ?」
「んー…まあね」
「……うちに」
「え?」
俯きがちにぼそりと呟いた言葉を聞き返すと、僅かに赤くなったシリウスが顔をしかめて言い直した。

「マルフォイ家がやんなったら、…うちに来てもいいぜ」

な、なんだこの可愛い生き物……!!一応マルフォイ家とは親戚だし親も煩くいわねーだろうしって凄い早口で弁解し始めたし!や、やっぱツンデレ気質備えてるわこいつ!

「あはっ大丈夫だよー、シリウス!」
「…」
「あそこも何気楽しいし?それに、待っててくれてる人もいるから」

私がそう言うと、シリウスは複雑そうに笑って「そっか」と頷いた。
「でも遊びには行きたいなー」
「なまえ」
「んお?」
後ろからかかった声に振り返れば、無表情のルシウス。
「話がある。来い」
「えー後ででえーやん!」
「ダメだ」
「ケチデコ」
「よし。お前のすごく出来の悪いテストを屋敷に」
「ああああああ今すぐ行きますううう」
慌てて立ち上がった私の椅子を引くルシウル。こんな時にも紳士的。私が勝手に呼び集めて一抜けってめちゃくちゃ自己中だけど、まあこのメンツなら大丈夫か。
ルシウスの背中に続く私をシリウスが呼び止める。


「お前、糖蜜パイ好きだったよな」
「ん?あ、うん」
「…用意しとく」

ツンデレなシリウスが何を言いたいのか察知した私は、ぱあっと笑って親指をたてた。
ピーターとリーマスに「良い休暇を」と声をかけて、言い争う二人の背中を叩いてから広間を出た。

「ねールシウス」
「何ですか?」
「マルフォイのお屋敷に皆を呼んでパーティしようよ」
「馬鹿ですか」
「卿もよんでさ」
「馬鹿ですか!」
「大丈夫だって。鼻眼鏡とかかけさせればきっとバレねーし」

無理とわかっていても言うだけなら別にいいでしょ。
私は実の所平和主義者で、グリフィンドールにもスリザリンにも、卿にも、皆にも、仲良くいてほしいのだ。戦いなんか起きなければいいと思ってる。ホグワーツの皆が、私は結構好きらしい。

「我が君になまえ様は甘すぎだと報告しておきます」
「おま、すぐそれか!」

だけど、なんだか今は、早く会いたくてたまんないや

(あーあーあーあーきっと色々怒られんだろうなぁ)
(ご覚悟ください。…でもきっと我が君はあなた様のお帰りをお待ちですよ。)
(……ねえルシウス、私がこの前授業で作った薬持ってたら喜ぶかな。ほらアレけっこうレアって言うじゃん?たぶん卿も気に入ると―――)


同時刻

「我が君、明日のスケジュールを」
「何も入れるな。……明日の俺様は恐らく多忙だ」

Tomorrow!
778899hit ホグワーツ組で休暇の話