皆さんはガレーラカンパニーというのをご存じでしょうか。そこは簡単に言うと、屈強な船大工達が、屈強な船を、相手問わずでカンパニーしている…ようなところだ。ニュアンスで分かってくれればいい。
私のガレーラカンパニーに対する見方は、つまりそんなところだった。


「好きじゃ!!!」
「…またですか、カクさん」

この男と出会うまでは。


「ワシは何度でも言うぞ!アンタが好きじゃ。すっかり惚れとる!」
「はっ恥ずかしいじゃないですか!そんなおっきい声で!」
「え…別に」
「神経どうなってんですか」
「のう、これからデートしよう」
「は?」
「デートじゃ!」
「あの…私忙しいのでッギャ!うわ、ひーーーー!!」


説明が遅れて申し訳ない。あ、ちなみに悪いのはカクさんである。
聞かざる状態のカクさんは私の訴えなど当然無視して、在ろうことかひょいと担ぎ上げ(私を!軽々とだ!自慢じゃないけど身長あるから体重もある!はず!ないかも!)歩道橋を飛び下りた。
飛び下りた。
歩道橋を。
つまりこうなる。


「ギャ―――――――ァァアア!!!」
「うっさいのォ」
「死ぬっ」
「大丈夫じゃ!わしは強い!」
「カクさんは死なず私が死ぬ!!」
「わしがアンタを殺すはずないじゃろ!だって」

ゾッコンラブだしみたいな言葉が続いた気がするけど、落下による浮遊感とかそんなんの所為で正直まったく聞こえない。
冗談でしょ死ぬってこれ死ぬって!カクさんガレーラだし死なないかもしれないけど、そもそもガレーラ=死なないって皆が知ってる方程式だけどソレもどうなんだ人間として!っていうかもう何言ってんのかわかんねー!とりあえず、しぬー!!!


ドゥン!

「……」

パラパラ…

「…」
「無事か?」
「…ありえないことに」
「」

全然無事だ。どこも痛くない。
ただ私をお姫様抱っこするカクさんの足の負担を心配して見下ろした時、有り得ないものが視界に入ってきて私はおったまげた。

「カ、ッカカッカカクさぁぁあんん!!」
「ん?何じゃ」
「ふんっ、ふんでます!!人!!」
「……あ」

私とカクさんの体重+重力を一身にその身に引き受けたその人はむくりと起き上がった。ぶったまげた私は気絶寸前です。
起き上がったその人の肩に、ハトがふわりと舞い降りた。

「すまんなルッチ」
「まったくだ。気を付けろ、クルッポー」

しかもハトの方が喋った。

「ああ、そうじゃルッチ。紹介する」

ルッチと呼ばれたのがハトか、人か、その辺は定かではないけど、とりあえずルッチさん(人)が服の汚れを叩き落としている傍ら、無事に地に足着いた私は、ルッチさん型の窪みとひび割れた地面、そして無傷で平然としている彼を見て察した。
ああ、こいつもガレーラだ。


「わしの恋人のなまえじゃ」
「違います」
「すまん間違えてしもうた。婚約者じゃった」
「それも違、っていうかカクさん、私もう帰りたい」
「そうか。じゃあ我が家に行くとするか」
「何かすごく間違った解釈をされている気がします」
「良いホテルを紹介してやろうか、クルッポー」
「ルッチさんんん(鳩)!!??」

こうして奇妙な出会いを経た私は、その後、結局聞かざるなカクさんとデートすることになった。理由は良く分からない。けど、正直カクさんとのデートは楽しかった。
カクさんのお話は平凡な私には想像もつかないようなスケールで常に展開されていて、ある時は空の上で奇妙な鳥に話しかけられたり、悪魔の実の能力者と友達になったり、建物から飛び下りて逆立ちの着地をしようとしたり、それに失敗して突き指したり。そんな冗談みたいな、作り話みたいな実話を聞いているのは飽きない。


ガレーラの職人はモテると聞く。
だからカクさんもきっとモテるだろうに、何で私なんかが好きなのだろうか。
思ってすぐに聞いてみてしまった。
数秒間を置いて、カクさんの顔というか全身がボッと赤くなった。

「………ええええ!!」
「なっ何じゃ」
「何で赤くなるんですか!」
「アンタが急にそんな事聞いてくるからに決まっとるじゃろ!」
「いつもそれ以上に恥ずかしい事平然と言ってるくせに」
「話が別じゃ。…す、きなのに…理由なんてないわい」

帽子をくいっと下げながら、カクさんの語尾はどんどん小さくなっていく。
不覚にもきゅんとしてしまった私が彼に落ちるのも、もう時間の問題かもしれないと思った。


恋心を持った獣

(お互い理解し合う為にもとりあえずベットインじゃ!)
(くそ、油断した。まさか今そんなのがくるとは……絶交したい)

787878hit 猛アタックするカク