無限地獄と言うのは大変暇なものである。それはここに閉じ込められている囚人なら誰しも知っている事だ。
ある日突然檻の中に入れられてきた新人、エース君もまた大層暇を持て余しているらしかった。

「っ…っ…」
「…」
「…っぶはぁ!!」
「ふは!フー、まァた俺の勝ちだな!」
「はぁ、はぁ、ちくしょう」
「俺に勝とうなんざ100億万年早いんだよ」
「ちくしょー!!」

私とエース君がたった今やり終えた遊びは、どちらが長く息を止めていられるかごっこである。暇人が暇故に作り出したしょうもない遊びである

「つまらんなー。この遊びも飽きちゃったし?なんか楽しい事ないかな」
「しりとりは?」
「もう言葉のストックないくらいやり尽くした。にらめっこは?」
「もうあれ以上の変顔思いつかねーよ」
「じゃあ鬼ごっこ」
「範囲狭すぎ。…あっち向いてホイ」
「エース君手使えないじゃん」
「そうだった」
ぐうう
「あー…腹へった」
「じゃあご飯食べ行く?」
「どこにだよ」
「新世界」
「ああ、いいな。行きてぇ」
「じゃあ決定」
「………え?お前、何やってんだ?」
「何って…鎖ついてたら行けないじゃん」

私はエース君の腕についたゴツイ鉄の塊を弄りながら答えた。エース君はひたすら「え?」とか「は?」言っている。

「はい取れたー」
「…マジだ。どうなってんだ。」
「どうともなってないよ」
「なってんだろ。…夢か?これ」
「現うつつー!さーて何食べよっかな」
「ちょ、ちょ、タンマ……え?何これ。何なの?俺出られんの?」
「出られるよ」
「どうやって!?」
「私の能力で!あ、言い忘れてた、私悪魔の実食べた能力者なの。特技は瞬間移動です」
「んなバカな…ならお前、何でずっとこんなとこに」
「あ…さらに言い忘れてた。私囚人じゃないんだ」
「は?」
言われてみれば、血色も良いし、服や体にさほど目立つ汚れや傷がない。当然手錠もされていない。

「私とっても暇すぎてね、今の私より暇なものってないんじゃないかと思ったわけ。でも人に聞くとレベル6なる空間が世界一暇な場所だって言うじゃない?だから今の私とどっちが暇か確かめに来たってわけ」
「…」
「結果、こっちのほうが暇だった。でもそこにエース君が現れて、私の丁度いい暇つぶしになってくれた。以上であらすじを終わりにします」
「…え?」
「まだ質問あんの?」
「ねぇけど…え?じゃあ何だ…お前出ようと思えばいつでも出れたの?」
「うん」
「俺もつれて?」
「もち」
親指を立てて片目を閉じれば、エース君は思いっきり頭突きをかましてきた。いてぇ。
「いや言えよ!!」
「そう来たか」
「そうしかいかねーから!暇ひまひまーって、アホか!アホの遊びに付き合っちまった!」
「あはは、ドンマイ」
「ふっざけんな!」
「さあさあ、そう怒らずに。この穴に入って!」
「うわ!いつの間にか穴が…」
「リニューアルオープンした例の店の裏口に繋がってるよ」
「やりたい放題か!」
「えへへへ。あ、でも最後にここでもう一回しりとりするなら今のうち、ってちょっとエース君先行かないでよこの穴狭いんだから!もう」

暇つぶしの法則

(た…ただいま)(おじゃましまーす。うわーこれが白ひげ海賊団の船かぁすっげーなー)
(おかえりー………って、ええええええ!!??)
(エエ、エ、エースゥぅう!!?)
(オヤジィィイ!!エースがなんか帰ってきたぁぁあ!女連れでェエ!)

(そうなるよな。うん。)
(エース君ち賑やかだね、あはは)

769769hit エースと脱獄
変態連載ヒロインの能力を拝借