もぐもぐばくばく、ごくん…!効果音を付けるならきっとこんな感じだろうか。そんなに急いで食べてどうするの?と訪ねてしまいたくなるほどに彼の手は光速で動く。吸い込まれるようにして無くなっていく料理に思わず目を疑った。(あたし、疲れてんのかも…)


「あの…お客さま?」
「むんごー?」
「あ、ええと…そろそろお店の食材尽きそうで」
「んごっほ」


ンゴッホの意味は分からなかったけど親指を立てられたので恐らくOKという事だろう。事実なんにもオッケーじゃないんだけどね。


「むぐぐもご、ごくん…ぶはー!美味かった!」
「おめェさん相変わらずイイ食べっぷりだねェ」
「オヤジんとこの飯はいつきても美味ェからな!ありがとよ。それじゃあ」
「バカヤロー。そう何度も食い逃げさせるかってんだ!」
「ちぇ、手厳しいぜ」


そこで初めてテンガローハットの人が、マスターの傍にいるわたしに気がついたようだった。きょとんとした視線をこちらに向ける。それに気付いたマスターがははっと笑いながら彼の前に私を差し出した。

「つい最近うちに入った子でね。」
「は、はじめまして」
「おう!そうかァ。お前いい店を選んだな!俺はエースだ」
「知ってます。白ひげ海賊団の隊長さんですよね…!」
「ん?まーな」
「エースさんは良くここに来るんですか?」
「ああ。ここの飯は美味ェ!」

けらけらと笑うエースさんから目を離す。だけど少し勿体無く感じてもう一度伺えば視線があってしまい、さりげなくまた逸らしていおいた。(何だか今日のわたしは変だ…!)



「…オヤジ!」
「あん?」
「ちょっとこの子借りてくぜ!」
「え、ちょっ…!きゃあ」

有無を言わせずわたしを担ぎあげて店を後にするエースさんの背中を、マスターの声が追いかける。エース!ちゃんと返せよー!


「あ、の、エースさん!何するんですか下ろしてください!」
「嫌だ」
「イヤって…」
「俺はお前が気に入ったんだ」


ビックリして顔を上げればやっぱり愉しそうに笑うエースさん。この数十分の間にわたしは何度エースさんの笑い顔を見たんだろう。そしてそのうちの何回この胸はときめいてしまってるんだろうか…!地面に落ちないようにエースさんの肩に回している腕。触れる場所が妙に熱を持っている気がした。


「飛ぶぞ!」
「はい……って、ええええええ!?」


みるみるうちに街が離れていく。エースさんの足だった辺りはいまはメラメラと燃え盛る炎の塊だ。悪魔の実。そのワードが脳裏をかすめて消えた。なるほど彼は能力者だったのか!


「オレはお前に一目惚れした」
「……!!」
「海賊だからな。欲しいもんは何でも手に入れる」
「エ、エースさん」


「文句は聞かねぇ。覚悟しろよ?」


ニヤリ。今日見た彼の笑顔はどれも無邪気なものだったためか、こんなふうな企んだ表情もするのかとある種感心してしまった。ここで紛れもなく事実なのは、わたしの鼓動が一際高鳴ったことだけだった。

Smiles!

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ごめんなさいすいません!サイトウさまこんなボケなサイトにいつも来てくださっているのに、こんな恩知らずな作品しか書けなくて本当ごペンなさい!だけど貰ってくれると嬉しいです…!キリリクどうもありがとうございました(^q;)/