とりあえず私の友人トム・リドルの話をしようと思う。彼はとても人柄がよく八方美人でお顔もよければ頭も良い。人間全て揃ったら神に近い存在になれるよね〜みたいな噂さえ囁かれている程の超優等生である。ホグワーツ始まって以来の秀才なのである。そして皆さんご存知の通り、彼は性格がものすごく悪かった。

「暇だねー、リドル」
「君はいつも暇だろ」
「何言ってんだか。私いつも多忙じゃん。朝から晩まで仕事に追われる毎日じゃん」
「何言ってんだか。君が追いかけてるのは蛙チョコとちょうちょだろ」
「ばかにしやがって!チョウチョ取り楽しんだぞ!なめんな」
「煩いな。今いいところなんだよ」
「薬草学の教科書にいいとことかあるか!」
「分かってないな。これだからトロールは」
「だれがトロールだ!リドルなんか爆発しろっ」

私がそうシャウトした途端、何か言い返そうとしていたらしいリドルがボン!と白い煙のカタマリに覆われた。
「ぎゃあああ!」
すっかりビビリ散らしているのは私だ。
「ごめんリドル!!!うそ!爆発しろとか言ったけど、あれ嘘!ごめん謝るから死なないでぇええ!」
「…煩い奴め」
「え」

煙の中から聞こえたリドルの声。だと思うけど、少し低いような気もしなくはない。生きてる…?

「…リドル?」
「その名で呼ぶなと何度も言っただろうが。いい加減学べ」
「……ドチラサマ」

煙の中から姿を現したのは、すらりとした長身の、黒い服に身を包んだ男の人だった。私は呆気にとられて立ち尽くした。
よし、状況整理。私はリドルとスリザリンの談話室で仲良くお茶会をしていて、そしたらリドルが急に爆発して、目の前に男の人が現れた。……これなんて魔法?

「……ここはどこだ」
「え、す、スリザリンの談話室っすけど」
「スリザリンの談話室だと?」
急に眼をかっぴらいた男の人は辺りを見回して、苦々しく「確かに」と呟いた。何が確かになのか良く分からんけど、この人よく見たらリドルに似てるような。
そんな事を思っていると、
「あのボケナスめ、よくも私を、こんな…帰ったらただじゃおかん」
とぶつぶつ悪態を吐いていたお兄さんが荒々しく椅子に腰かけた。リドルの読んでいた教科書を手に取り、少ししてフンとほん投げた。(あああ…何と恐ろしい事を)

「……お前は、なまえか」
「そ、そうです」
「相変わらずチビだな」
――相変わらずチビだね
「なんだとリドル!!」
「…」
「…ん?」
今私リドルって言ったな。この人明らかリドルと違うのに。(でも何でだろ、一瞬ものすごくリドルに言われたような気がした)


「…まあいい。なまえ、」
「?」
「お前はもう少し勉強しろ」
「はい!?」
なぜ突然現れたこの人にそんな事を言われなくちゃいけないのか。私は心底疑問に思っているのにそれを無視して男の人は続けた。

「それから今のうちから早寝早起きを心掛けろ、お前の生活習慣は未来に響く」
「なっ」
「それに菓子の量も減らせ。これも未来に響く」
「デブると!?」
「それと」
「まだあるのか…」うんざりしかけた私の目を射抜いたその人。あまりの真剣さと、やはり見覚えのあるワインレッドの瞳に、私は言葉を失った。

「――何があっても、他人に染まるなよ」
「…ひとに?」
「そうだ」

お前はお前らしくあればいい。大人の魅力を連想させる笑みを浮かべ、その人は私の頭を撫でた。
私はその手の感触を知っている。
「…、りど」
ボフン!!
再び煙にまかれたと思ったら、私の目の前にはご機嫌なリドルが立っていた。

「何だい、そのアホ面」
「だ…だって今!そこにっ」
「10年後の僕だよ」
「じ、じゅうねんご!!?」

じゃあたった今までそこにいた男の人はリドルだったわけか…!ホントに何でもアリだな、魔法って。
リドルは床に落ちていた教科書をそっと拾いながら口元をゆるませていた。

「…リドル、10年後も美形だったんだけど」
「感想はそれだけかい?」
「めっちゃ説教された。……って、じゃあリドル今まで10年後にいたわけ?」
「そうだよ」
「へー、誰いた?」
「君」
「え!?」
「そもそも、未来の君の所為でこんなことになったんだよ」
「み…未来の私すごい」
「巻き添えくらってる未来の僕が憐れで仕方ないよ」
「なんだと!……ね、ところでリドル。未来の私太ってた?」
「別に」
「(あああ良かった)」
「心配しなくても胸は今より成長してたよ」
「セクハラだ!!」
「ああ、あと、僕がほっぺつねったら虫歯をすごく痛がってた」
「それだ!」
「何が?」
「いや実は未来のリドルがさぁ」


10年後も、君は僕の横にいるわけだ



(ところで、何でそんな機嫌いいの?)
(別に?普通だよ)

***

「このド阿呆めが!さっさとその変な装置をこちらへ渡せ!俺様が直々に破壊してやる」
「やだよコレ綱吉から借りた大事なやつなんだから!」
「くだらん」
「何だと!てか虫歯痛い!」
「フン…お前が一日中虫歯虫歯と煩いから忠告してきてやったわ」
「まじか!ありがと卿、だいすき」
「暑苦しい抱き着くな」

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