『ドラコ、おはよう!今日はとっても素敵な日だね。さて何の日でしょうか〜!正解は裏面に…書いてありませーん!ぶわっはっは!答えが知りたければ談話室の鉢植えの中を見てね』

朝起きたら、枕元にそんなメモが貼ってあった。
僕、ことドラコ・マルフォイは差出人不明のこのメモをじっと見つめて思う。―−あいつだ。心当たりは一人しかいない。こんな面倒くさくてウザさ1000パーセントのメモを書き残せる奴は、僕はなまえの他に知らない。
(…寝よう)
もう一度布団をかぶり直して、目をつむる。
「…」
こんな寒い日の休日はひたすら寝ているに限る。何が楽しくてそんな宝探しみたいな真似をしなければならないんだ。だれがやるか。
「…」
そもそも、今日は何の日でもない、只の休日だ。僕の誕生日はもうとっくだし、あいつん誕生日もまだ先じゃないか。ほんとうにあいつのやる事は意味が分からない。

「…」


――くそ、気になって目が冴えた。あいつなんて大嫌いだ。


『ラッキーな事にドラコ君は二枚目の手紙を発見するに至りましたー!パチパチパチおめでとう。だがしかしBUT!スリザリンのマドンナなまえちゃんはこの程度では満足しません!次はゴイルのベットの下だよ』

結局僕はあいつの策にまんまとハマり、のろのろと着替えて談話室に降りてきた。そしてメモにも書いてある通り二枚目を発見するに至る。
相変わらずウザさ無限大だ。だれがマドンナだよ、アマゾネスの間違いだろ。
しかしツッコむ相手はこの場にいない。そしてあろうことか今しがた降りてきた階段をまた登れとか言ってやがる。

「あら、今日は早いのねドラコ」
「まあな」
「だったらあなたも一緒に大広間に行かない?今ならまだ朝食が残ってるわ」
「……いや、いい。まだやる事があるんだ」

スリザリンで二番目くらいに可愛いブロンドの女子生徒の誘いを断ってまであのバカのお遊びに付き合う僕もたいがいどうかしてる。ちなみに腹の立つことに一番かわいいのはそのバカだってんだから、もはや手の付けようがないのだ。(だからつまり、自称マドンナ発言は嘘ではない)
僕は半ば自棄になって階段を駆け上り、さっき出たばかりの部屋に入ってグースカいびきをかいているゴイルのベットの下を覗いた。ふわりと漂ったゴイルの足の臭さに、心の底からうんざりする。
ベットの下には、不自然に埃を払った床と、見慣れた三枚目のメモ用紙が置いてあった。

『コメントに困り始めた頃だろうけど、ゴイルの足の臭さについては謎だから私に聞かないでね^^もうここまできたらドラコの事だから無視せずにはいられないよね。気になって夜も眠れないよね!よし、そうと決まればハリーの上着ポケットの中をチェック』

こんだけ動き回ったら夜も眠れるだろ。というか、お前、いきなりハードル上げ過ぎなんだよ!
何が嬉しくて朝からポッターに会いに行って、奴の上着のポケットに入ってる手紙を受け取らなきゃいけないんだ!お前の事だからどうせこっそり入れたんだろ。僕は行かないぞ。ポッターにどんな顔で見られるか、想像に難くない!絶対に、行かないからな…!!!


***


『すっげーなドラコ!君ってやればできる子だったんだね。ハリーにどんな顔されたかは聞かなくても分かるわ!よくできました(^q^)/そんな頑張ったドラコに最後の手紙の場所を教えてあげよう!レッツ・談話室!』

結局。気になって何も手につかず、ホグワーツ中を駆け回ってポッターを探し、グリフィンドールの一年を脅して談話室の中にいないか見てこさせ、そしてまた駆け回って廊下でようやく奴を発見。咽こみながらそのポケットの中のブツを手に入れることに成功した。
(君、どうかしたのかい?マルフォイ)
(うるっ、ゲホッ、ぜーはー、うるさい!黙ゲホッ、れポッター!ぜー)


廊下を歩きながら息を整え、ドラコは思った。
――せっかくの休日に僕は一体何をやっているんだ。
さっきまで走り回っていたけど、なまえの姿はまったく見当たらなかった。
ともかく…次で最後なんだ。
これで何もないなんてオチだったら、流石の僕もキレてやる。少なくとも1週間は口を利かないぞ。そう決意したドラコは、額の汗をぬぐって談話室に足を踏み入れた。


「…」

人気の無い静かな談話室の暖炉の前、フカフカのソファに体育座りをしてうたた寝をしているのは、間違いなくなまえだった。ドラコの気配に気づいたのか、ぱちりと目を開いて満面の笑みを浮かべる。
それを見た瞬間、ドラコの中で膨れていた怒りはすうっと消え去っていく。…お手上げた。

「僕にこんな事させる奴なんて、君くらいだ」
「ふふっ…おつかれ」
「それで?最後の一枚はどこにあるんだい?」

なまえは自分のポケットをあさり、4つに折りたたまれた例のメモをドラコに渡す。
ドラコはそれを受け取り、開けてみる。

「『きっと来てくれると思ったよ!ありがとう、ドラコ』」

メモの言葉と、なまえの声が被った。ドラコはほんのり赤く染まった顔を上げて、口をへの字に曲げる。

「僕の、自惚れじゃないんだろうな」
「うん」
「…ドッキリだったら殺すぞ」
「んなわけないじゃん。ドラコは頭いいから、こんな暗号簡単でしょ」
「こんなの暗号って言わないだろ」

照れ隠しにずっと俯いているなまえの両頬をドラコはひやりとした両手で包んだ。飛び上がったなまえを見て、ドラコはくっくっと笑う。

「君の為に走り回ったんだ。他の誰の頼みでも、こんなこと僕がすると思うか」
「お、おもわん…ドラコケチだし」
「黙れ。それと、さっきから顔ニヤけっぱなしだ」
「お互い様だよ」
「…それで?今日は何の日なんだ」
口元を引き締めたドラコが、片眉を上げてそう尋ねた。なまえはドラコの首に腕を回してにっこり答える。
「決まってるじゃん」

告白記念日
メモの頭文字を繋げてね、なんて、言うまでもなかったよ。

相互祝い 記念日ギャグ/ドラコ
×