チャイムが鳴る。
うんと伸びをする私の隣で、同じように眠たげに大あくびをしているのはキッド。こちらに向かって嫌な笑みを浮かべながら近づいてくるのがローだ。私達はいわゆる「いつメン」だった。

「ぶへー!やっと今日の授業終わったー」
「帰宅だ帰宅」
「よォ、今日ゲーセンいかねえ?欲しいキーホルダーあんだよ」

ローの些細な提案により、私とキッドとローは三人で近所のゲーセンまで出向くことになった。暇だったから丁度いい。ローお目当てのキーホルダーを前にするまではその程度に考えていた。甘かった。

「ローが欲しいのって…これ?」
「…」

一台のUFOキャッチャーの前に並んで、それを眺める。隣でローはうっとりとそれを眺めていた。

「ああ。可愛いだろ」
「うんかわいい。かわいいんだけど……ミスマッチ!!」
「何と?」
「テメェとだよ!」

ローが欲しがっていたのは白いくまのキーホルダーだった。お腹を押すと「すいません」と謝る仕組みになっているらしい。ツッコみどころが満載ではあるが、とりあえずトライ。
した結果、一番目にやったローも二度目にやった私も玉砕。

「アーム弱すぎでしょコレ!ちょ、店員!」
「小癪な奴だ……。よし、こちらも最終兵器出動!」
「ゆけ!!ユースタス号!」
「ざけんな!誰がやるか名前ダサッ」

しばらくごねていたキッドだったが、私とローがつるんだら勝てないと分かっていたらしい。だらだらと100円を投入しアームを動かし始めた。

「あ!そこ、そこだ、いけー!」
「…」
「違うもう少し右だ。あと3ミリ」
「…」
「ちょ行き過ぎだよ戻って!カムバーック」
「…」
「大丈夫だ。そのままケツ持ち上げて穴にぶちこめ!ああ、いやらしい意味じゃねぇのであしからず」
「うるせェよ!!両サイドで!!」
「「あ」」

ぽと。


***


「…許さん…ユースタス屋め」
「俺の所為じゃねェだろ」
「あ、次、久々にあれなんてどう?」

目についたのはプリクラ機である。

「もっと奥つめろユースタス屋」
「テメェが端寄れ。フレームアウトしろ」
「何だと」
「やんのかコラ」
「あ。ちょっと二人とも左右で喧嘩しないでよ痛い!」

カシャッ

≪上眼遣いでかわいくお願いポーズをしてね〜!≫

「お願いポーズだって」
「誰がするか」
「ノリの悪いユースタス屋だ。俺はできるぜ」
「…っやってやんよ!」

カシャッ

「次変顔ね」
「お前はもともと変顔だから問題ねェな」
「ハハハ」
「いやうるせーし!笑ってんなアホファルガー!」

カシャッ

≪撮影終了!レッドピンクのコーナーに移動してね≫

「落書きか。俺パス」
「じゃあ荷物よろしく」
「俺のも。悪いな…お詫びにウンコをサービスするぜ」
「おいテメェ!余計なもんのせてんじゃねェよ!」
「ぶっふー!ローちょびヒゲ似合うわ」
「いいぞなまえ。ハナクソもつけとけ」
「ソレやったら、こっちのお前の穴と言う穴から「ノーマル・赤」で鮮やかな血を吹き出させるぞ」
「「発想がグロい」」


華の女子高生がプリクラ上とはいえ顔面出血多量というのは怖すぎるので、ローにチョビ髭をかくのは止めておいた。かわりにキッドの頭のてっぺんにお花のスタンプを押しておいた。後ろからゲンコツ食らわされたけど私は泣かない。

「あー、楽しかった」
「満足だ」
「テメェ等はな。」

僕ら学生やってます
(腹減った)(マックいきたい。フィレオフィッシュ!)(行くか)(おう)

577577/ゲーセンでたむろする ロー(キッド)