「それでは、今日の議題は、我が君の下着ならぬパンツについてです。はい、ルシウスさんどうぞ」
「馬鹿ですか!!」
「質問以外は受け付けません。ハイ次、ベラ姉さん」
「ノーパンはパンツに入りますか」
「馬鹿ですか!!」
「入りません、だって何故ならノーパンだから。それとルシウス、発言は手を上げてから」
「はい…!」
「どうぞ」
「申し訳ありません。お言葉ですが、馬鹿ですか!!」



夢馳せる黒


「ルシウスの口にバッテンガムテープを貼った所で、続けます」
「(ああお労しい、父上…。僕もう帰りたいです)」
「下着と言えば、ブリーフ、トランクス、ボクサーなどが挙げられますが」


ここでなまえは一度言葉を切った。
様々な面持ちで席に着くデスイーター達と視線を交え、再び微笑んで言葉を続ける。

「我が君のお召し物を我々が熟知していなくて、どうします」


どこからともなく「おお」と感嘆の声が上がり、(ドラコは完璧に出遅れた。おお、とか全く思えなかった。)ところどころで賛同の声が上がった。
なまえは満足そうに目を細める。(ドラコはそろそろ本気で帰りたいなと思った。)
なまえは持参のホワイトボードに「ボクサー」「トランクス」「ブリーフ」とマジックで綴った。この後は「正」の字で集計を取る予定だ。なまえは嬉々としていた。


「そこで、思案した結果このような場を設けて議論に至ったわけですが」
「俺様抜きで何を下らんことを」
「とか言いそうな恐ろしい我が君が登場なさる前にさっさと集計を取りたいところです。……ごきげんようヴォルデモートさん。」
「汗がハンパじゃないぞ。取りあえず、そこへ直れ」


解散の命を下された死喰い人達は、なまえに憐みの視線を向けたり、これ幸いと駆け出していったり、誰もなまえをフォローしようとするものはいなかった。
最後の一人が部屋を出て、扉を閉めても、部屋の中から断末魔が漏れ聞こえてくることはない。
デスイーター達が彼女をフォローしないのは、彼女が殺される立場にないということを、重々承知しているからでもある。

かくして、室内では。



「お前は一体何がしたいのだ。俺様の寵愛を受け、何不自由ない生活をさせてやってると言うのに…。意味の解らん議論を繰り広げようとするわ、朝食のスープには劇物を混入しようとするわ」
「ゲーゲー・トローチです」
「名など聞いておらん」
「在学時代、双子と仲が良かったものですから」
「ともかく。ともかく、だ」

ヴォルデモートは苦虫を噛み潰したような表情でなまえに尋ねる。

「ここでの生活に、嫌気でもさしたか」


なまえは「いいえ」と間髪入れずに答えた。
恐れからではない。純粋にこの人を悲しませたくなかったのだ。

「私が我が君の下着について議論したいのも、スープにゲーゲー・トローチを混ぜたのも、ここが嫌いで出て行こうとしていたからじゃありません」
「じゃあ、何だ」
「興味本位です。うふ」
「興味だと?デスイーター共から票を取ってまで興味があるのか」
「ぶは!違いますよ、我が君、違いますとも」

ケラケラ笑いつつ、なまえは続けた。


「何までは、殺されずに済むのかな、なんてね」

ヴォルデモートは眉を寄せ、にやりと笑んでなまえを引き寄せた。

「死にたがりめ」
「とんでもない」
「俺様に殺されたいのだろう」
「あなたの許容範囲を推し量りたいだけですよ」

どんな悪戯をしたら本気で怒るのかしら。
どんな暴言を吐いたら憎く思うのかしら。
何までは許されて
何からは許されないの?


「解っておろう。…貴様も莫迦じゃない」
探り合うような、しかし愛おしさを孕んだ眼差しを絡めて告げる。

「俺様が唯一赦さぬ行為を」

なまえは頷いた。

「我が君、あなた様のもとから、立ち去る事でございます」

「…俺様に殺されたいなら、そうするのが一番手っ取り早い」
「分かってませんね。さてはバカですか」
「何だと」
「私は、先程も申し上げました通り、我が君の許容範囲が知りたいだけなのです。したがって、あなた様をカンカンに怒らせてみたいだけであって…ヴォルデモートさん。

 あなたを悲しませたいわけじゃないんですよ」

怒りそうなことなら粗方やってみたけど、逃げ出したりはしない。ヴォルデモートさんがカンカンになるのは十中八九だったけど、それと同時に深く深く傷つくだろうと思ったから。
何事にも限度ってものがあるのである。少年少女は、それを覚えておくといい。


「俺様に理解しろと?」
「そう言う事です。ああ、たくさん喋ったらお腹がすきました」
「…すぐに夕食にさせる」
「メニューはイタリアンがいいです」
「いいだろう」
「…チッ」
「フン。」

しかしながら我が君の「限度」は中々のものだ。こういうのも「器がでかい」って言うんじゃないかな、となまえは最近そう思い始めていた。

「キレても誰も怒らないのに」
「俺様の許容範囲をなめるな。お前の我が儘など手に余る」
「ナギニください」

ゴン

562000hit 下着について語ってみる/ヴォルデモート

(集計結果でましたよー。トランクス2、ブリーフ4、ボクサー19、ノーパン1でした)
(バカめ、バカ共め。諦めていなかったとは…。とりあえずベラをここへ呼べ)