「ねえ、頭、恋って『落ちる』ものなの?」
「…」


なまえがまたおかしな事を言い出した。頭の心の声は私にダダ漏れだった。主に顔面から。


「何だよ、突然。変なものでも食ったのか?」
「強いて言うなら今朝頭が突発的に作ったオムライス食べた」
「神だったろ」
「神って言うかむしろモンスター?味と食感が」
「破壊的に美味いって事だな?そうだよな?あぁ?」
「そうです分かったから銃セッティングしないでほら」
「フン」
仕方ねぇなと言った様子の頭に、私は再度質問する。


「恋って『落ちる』ものなの?」
「そうなんじゃねェの?恋に落ちるとかよく聞くしよ」
「でもそんなん言ったら、落とし穴にも『落ちる』だし受験にも『落ちる』だよ。あ、受験生のみんなごめんね!」
「誰に謝ってんだ。つーかどうでもいいだろそんなの」
「じゃあ質問変える」


「恋って『わずらう』ものなの?」
「…そうなんじゃねェの?恋患いとかよく言うしな」
「もはや病気と同列の扱いじゃん!恋恐ろしくね!?」
「恐ろしくねェよ」
「だって罠とか病気とかで例えられてんだよ?よかったー私まだ未経験者で」
「…ハ?」
「え?」
「お前今なんつった」
「え?」
「その前だ!」
「よかったー私まだ未経験者で」
「冗談だろ」
「誰が冗談なんて言うかい!あたしが落ちたのは階段だけだ!」
「胸張って言うな……だが、まァ」

へえ。ふーん、と私をじろじろ見ながらニヤリと笑う頭。
私は身の危険を感じて(この船で養った危機察知能力はんぱねぇマジで)ドアに一目散!
しかし取っ手を掴む前に頭のたくましい腕が腰に巻きついて、私の逃亡劇は始まって2秒で終了した。


「か、かし……何事ですか?」
「口で言うより体験した方が早ェだろ」

木の扉に背中がピッタンコしている私を、頭はすぐ上で見下ろしている。どうしてやろうかと企んでる顔だ、これは。私の背中に冷たいものが伝った。

「頭、色気むんむんなんだけど」
「知ってる」
「わざとかよ!困るんで止めてください」
「分からねェ奴だな


 ……困らせてェんだよ」
「ぐひゃぇ」
「…萎える」
「だっ、て、耳!ぐきゃあー!くすぐった、ちがう、も…かゆい!」
「か…かゆい?」
「うん。背中がぞくぞく、…かゆい!」
「…ほー」
「何で嬉しそう!?ちょっとか、かしらっぁ、や……止めろ!

ゴッ









「頭突きはない、と自分でも思った。うん。乙女が、仮にも船長に…あ、仮じゃないや間違えた」
「…」
「でも、だって、あのままじゃ絶対あたし死んでたもん」
「死ぬわけねェだろ」
「頭あたしの耳食ってたくせに」
「それで死ぬかよ」
「死因は心臓発作だよ。だってヤバかったもの、飛び出そうだったもの」
「…あ?」
「今ここにいるのだって結構しんどい」
「…」
「あ!ちょ、ストップ!それ以上近付かないで」
「理由は」
「何か知らないけど、心臓壊れそう。これあたし死んだよ絶対あーあーまだ恋もしてないのにあーあーあー」
「……」

This is it!
(って、いつ教えてやろうか…?あァ、これからが楽しみだぜ)
(何笑ってんの頭。クルーが死の間際だってのに)
(ああ大丈夫。死なねェから)

555555hit ギャグ(やや甘になっちゃった)/キッド