はっくしょん、ぶえっきし!と、隣でしきりにくしゃみを繰り返す彼に目をやれば、面目なさそうにへらりと笑った。


「悪いな、花粉症なんだ」
「風邪かと思いました」
「おれが風邪なんかひくかよ」
「ですよね。隊長が風邪なんかひくはず無いですよ」

だってばかだもの。心の中でつけ足せば、エース隊長は「どういう意味だ」と食い下がってきた。が、そこはスルーしておく。


「ところでおめェ、最近どっか変なとことかねーか?」
「へんなところ?」
「俺を見ると胸が痛くなったりブエッキシーン!(何てタイミングの悪ィくしゃみだ!)」
「うっわ、汚!はい隊長ティッシュ」
「おう」
「隊長を見ると胸が痛く…?頭が痛くなったことはありますけど」
「ズビー!…おれは今多大なショックを受けている」
「鼻かみながら言われても。あ、このクロワッサンおいしい」
「ありがとうよ嬢ちゃん」
「……おいおっさん!」

エースはぱくぱくとクロワッサンを頬張るなまえに聞こえないように小さな声でカウンターの反対側にいる店長を呼び、そっと耳打ちする。


「おれに、くろわっさんの作り方教えろ」
「は?」
「いいから教えてくれ!後生の頼みだ」
「…たって兄ちゃんあの白ひげ海賊団の二番隊隊長なんだろう?あの船にゃあ専属のコックがいると聞いてるが」
「俺が作んなきゃ意味ねェんだよ」
「あの嬢ちゃんにあげるのかい?」
「ああ。スキって言ってたからな…おれが作って食わせてやるんだ」
「そういうことなら仕方ねェ!おじさんも一役かってやろう」
「恩にきるぜ…!これであいつが少しでも俺を意識してくれりゃもうけもんだ」



エースは未だに美味しそうにパンを頬張っているなまえに目を向けた。みてろ、今にお前をオトしてやるからな…!おれはマルコに聞いたんだ
女はギャップに弱ェって!
いきり立って燃えるエースの隣で、なまえはパンを咀嚼しながら思った。…全部、聞こえてるよ。
(あたしはとっくに隊長に惚れてるって)(面白いからまだ言わないでおこうっと)
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