「おはよーごぜーまーす」 「何だその気の抜けた挨拶は!けしからん!!」 「お早うレヴィ。今日も朝からムサいね」 「なぬっ」 「おはようなまえ」 「もーにん、マーモン。ちゅう」 「なまえは甘えん坊だな」 「う゛お゛おおい!ザンザスの前で奴の神経逆撫でするような事してんじゃねェ!!誰が被害被ると」 スクアーロの頭にグラスが衝突した。ふらっと倒れるスクアーロ。当たり所が悪かったね。そうだね。と私とマーモンはそんなスクアーロを一瞥してテーブルに向かう。ヴァリアーではわりと日常的な光景だ。というか、この時間帯にザンザスが起きてる…奇跡だ!今日は雨に違いない! 「おはよう、ザンザス」 「…」 「拗ねないで」 「カス」 「ちゅう」 マーモンにしたのと同じようにほっぺたにキスするとザンザスの機嫌はほんのちょっと良くなった。結構けっこー。 「あら起きたのね、なまえ」 「ルッスーリア」 「今日はなまえがケツだぜ」 「ベル…。おはよ」 二人は豪華な料理を手にして台所から出てきた。ベルが手伝うなんて珍しすぎる……今日は雨じゃない槍だ。絶対槍降る。 「今失礼な事考えたろ」「べ、べつに」「しし」 「というか、何この豪勢な料理。…誰か誕生日?」 私がそう言うと、皆「何言ってんだこいつ」みたいな顔して私の方を見てきた。え? 「今日はあなたの記念日じゃない」 「わたしの?」 わたしの記念日?なんだそれ。私とザンザスが付き合いだしたのは確か夏頃だし…私が幹部に昇進できたのは冬だし(私はもとはスクアーロの部下だったのだ!)…私の誕生日は…知らんし。 「今日はテメェがヴァリアー入りした日だ」 「え……。ああ!」 「忘れてんじゃねえ、ドカス」 「なまえが誕生日覚えてねーって言うからこうなったんだぜ」 「…そっかぁ」 むずむず。 むずむず。 今日はわたしの記念日か。多忙なヴァリアー幹部がこんだけ顔を揃えてくれて、ご馳走を作ってくれて、運んでくれて…お祝いしてくれる、素敵な日。 「なあ、なまえ固まってんだけど」 「感激で声も出ないんだわ、きっと」 「そうみたいだね」 「こいつこういうの慣れてねぇだろうからなぁ」 「こ奴はいつも企画する側だったしな」 「…なまえ」 ザンザスが私の名前を呼んだ。 「今日はどこへなりと付き合ってやる。…好きなだけ甘えろ」 キャー!甘いわー!とはしゃいでレヴィの首を絞めるルッスーリア。「あいつも成長したなぁ」なんてどこかママのようなスクアーロ。ベルとマーモンはどこか楽しそうに傍観を決め込んでいる。 ――好きだ。 ヴァリアーの皆が好き。 世間でどう悪く言われようとも どれだけの人間を殺してこの場にいようとも たった一つの私の家族。 手始めにザンザスに飛びついた。大好き!大好き!どうしたらこの気持ちが皆に伝わるかな。どうしたら、どうしたら。 「ありがと…!!!うれしいっ、皆だいすき!…うわぁあああん」 結局わからなくて。 言葉で伝えるしかなくて。 精一杯叫んだ私を皆がどんなに優しい顔をして見ていたかなんて、涙で視界の晴れない私にはとうてい知る由もなかったのである。 魔法が使えない生き物たちへ (愛の紡ぎ方を教えよう) ×
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