ザ、ザ、ザー、ザ 『…――ンポンパンポーン、1年B組、ユースタス・キッド君、1−B、頭がご機嫌なユースタスくーん。今すぐ放送室まできなさーい。1分以内に来ないと小6の頃の君の恥ずかしい小説赤裸々に音読しちゃいまーす。はい、イーチ、ニー、サーン…』 三時間目半ば。 机を蹴倒しドアを蹴破ったユースタス君が、この世のものとは思えない形相で教室を出て行った。(前説) 「なまえテメェェェェ!!!!」 「あ、オッスキッド。今物語は丁度キッドがグランドライン(笑)に旅立ったところだよ」 「あああああああああ」 なまえから古びたボロボロのノート(タイトル「俺のこうかい日記」)を奪い取って、憎たらしいそのクソアマの胸ぐらを掴み上げた。自分で言うのも何だが、温厚な顔つきではない方だ。だからその俺に凄まれてケロっとしているこいつは相当ヤバいタマである。 「ちょっと、先輩に向かってその態度はなーに?」 「何が先輩だこの野郎!!」 「私この春三年生よ?にこ上にこ上」 「うっせェクソカス女!!テメェ大体何でこのノート持ってんだ!俺ずっと探してたんだぞ!」 「小6の時あんたが読ませてくれたんじゃない。あんまり可愛かったから借りパクした」 「最低じゃねぇか!!」 「おれのだいこうかい!見てくれ!っつってねニヤニヤ」 「殺す」 「とりあえずキッド、行くよ」 「あ゛ぁ!?」 「そろそろ激おこプンプン丸なスモーカーとかがここに来るから、退散退散」 確かに、怒号と足音が近くに聞こえる。 なまえはマイクのスイッチを切って立ち上がると、放送室の窓からひらりと外に身を翻した。幹の太いブナの木をするする下に下りる様子は手慣れたものだ。 「……ん?」 こいつ今マイク切らなかったか。 「、……」 「何震えてんのキッド。降りんの怖いの?大丈夫落ちたらキャッチしてあげるから」 「なあ……なまえ、まさかテメェ今の会話校内に全部」 「え?イエス・オンライン!」 「その親指今へし折りに行くからそこ動くんじゃねェぞドカス野郎ォォ!!」 なまえと俺はいわゆる、幼馴染と言う奴で。 二つ年上のこいつとは俺がガキの頃から付き合いがあった。 「キッドー、暑くてハゲそう」 「ハゲてくれ」 「やだ、切実」くすくす笑いながらなまえが俺の背中に張り付く。あちィ離れろ、言えば、あっさり離れやがってムカついた。 なまえの自転車はサドルが低くて、空気も入ってねェし錆びついてるしで、漕ぎにくくて仕方ない。 それでもこのアホ女を後ろに乗せて自転車を漕いでやる俺は、この暑さでどうにかなっちまっているようだ。 「ねー、私って悪い先輩だよねえ」 振り返らない、答えない俺に、なまえは続ける。 「後輩呼び出して授業サボらせてさ、いけない女ね」 「分かってんならすんじゃねェよ。迷惑だ」 「あは、でもだって、キッド怒りながらいっつも付き合ってくれんだもん。 優しくてまいるよ」 自転車を停めて、なまえが降りるのを待つ。 今日のサボり場は市民プールだ。 「水着は」 「ないよ」 「ねェのに来させたのかよ」 「制服のまま入ればいいじゃん」 「馬鹿言ってんな」 ぶーぶー煩い口を塞いで、二人分の鞄を手に自転車を離れる。 施設には入らずに、その周りを囲む公園を歩いた。ジリジリ照る太陽の真下で、絡めた指先はなまえの方が冷たかった。 「キッド、好きだよ」 「……うっせェ」 いつからか、幼馴染とは、少し違う関係になった。 俺もこいつも変わらなかった。 「泣きそうになってんじゃねえよ」 「……夏休みはいったら、もう会ってる暇ないんだもん」 「…終われば学校で会えんだろ」 「受験なめんなよ一年坊」 「放送室でマイクジャックするような度胸のある女が、何にビビるってんだ」 ようやく黙ったなまえの頬を引っ張る。 「18年一緒に居んだぞ。今更、会えない期間がなんだ」 「……うん」 「――どうしてもって時は電話しろ」 「来てくれんの」 「暇だったらな。……嘘だ、行くから」 「……へへ、優しいなあ、もう。オチビなキッドはどこ行っちゃったんだろうね」 「いねェよそんなの」 昔を懐かしんでは今を愛おしげに受け入れるなまえは、変わらないようで、あの頃とは違う。よっぽど、綺麗んなった。言わねえけど。 まあ、こいつの夏服も見納めかと思うと、少しだけ惜しい気もする。 …絶対言わねえけど。 ハルシオンデイズ (さ、家に帰って続きしよっか) (…続きってお前) (「おれのこうかい日誌2」と「3」もあるから久しぶりに音読を) (はっ倒す!!!) 1640461hit キッド学パロ ×
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