あー気持ち悪い、吐きそ
ガタン、ゴトン…
揺れる電車の中で、私はじっとしていた。
思えば昨日の夜から調子は悪かったのだ。それなのに、普通に学校にきて普通に授業を受けてしまった。
早退とかなんとか…すれば良かったのに。
今ここでリバースすればおそらく周りの皆様に多大なご迷惑をおかけするとともに最悪モライゲロの連鎖という大惨事を引き起こす事になりかねない。あー色々考えてたら眩暈が。
ガタン、と電車が揺れる。それに沿って私の視界もぐらりと傾いた。
やばい倒れる。
来るであろう衝撃に耐える為目をつぶるが、一向にそれはこない。ゆっくり目を開けると、一番に見えたのは金髪。
「…あ」
それから尖った耳と吊り上がった目。
私の腰を支える腕は筋肉質で、細いのにたくましくて。
「…ヒル魔……?」
ぷくうっと膨れるガムはきっと無糖でたまに、ミント。
肩に下がる鞄の中には法律で引っ掛かるいろんなモノが入ってるんだろうな。
あれ、私結構ヒル魔の事知ってるな。
「相変わらずバカだな…オメーは」
「…やっぱりヒル魔だ」
私はヒル魔が悪魔じゃない事も知ってるし
血も涙も無くない事だって知ってる
何でかって言うと…あれ、何でだろう。ああそうか思い出した
(ヒル魔に片思い中だからだ)
本当はドキドキしなきゃいけない場面なんだろうけど
今はホントに体調がいかんせん。
あーあとことんツイてない。
そう言えば朝見た星座占いは獅子座…最下位だったかも。
「大丈夫かよ」
「だめ」
「…熱あんじゃねーか」
「やっぱ?」
「アホ」
家まで送る、そう言って少し近づいた距離は優しくて。
ほらやっぱり悪魔じゃなかった。
「ヒル魔ー」
「何だよ」
「あー…、りがと」
「ケケ」
笑いながらポンポンと頭を撫でてくれたヒル魔に「大好き」と言ってみた。
知ってると返された。
何だ知ってたのか、何時からだろ恥ずかしいな。
色々考えてたら視界を影が覆った。少しだけ触れた唇。こいつ車内でなんて破廉恥な。つーかすげーな。
「…冷たい」
「お前が熱ィんだよ」
やっぱ占いなんて当てにならんと確信した、今日。