傲慢な唇でなぞり奪ってその冷えた視線で世界すら憎み殺して欲しかった。あなたにはそんな生き方がお似合いだわ、なんてそんな皮肉を孕んだ言い方は私には到底できないけどだけどそれでも心の底からそう思ってるわ。何故かって?だってあなたの、世界を嘲り罵り憎み怨み殺しているときのその表情。

とっても恍惚としてしまうほどに綺麗なんだもの


「クク、相変わらずてめェの思考はイカレてる」
「其れはあなたもでしょ」
「否定はしねェさ」

煙管を吹かしながら目を細めて笑う彼からそっと目を離して、月夜に流れる雲を見上げた。昨日まで降り積もっていた雪も日中の日照りに溶けて今は僅かな量しか残っていない。街の子供達の作った雪だるまも痩せ細り、心なしか悲しげに見えた。


ふと、今泊まっている宿の向かいの民家。あの家の何処かの部屋で何処かの誰かが殺されたという騒ぎがあったのを思い出した。ああ、自殺だったか。どちらにせよ馬鹿な事をしたものだとしか思えない。もう少し生きていれば素晴らしい幸せに巡り合えたかもしれないのに。もう少し生きていれば優しい誰かに殺してもらえたかもしれないのに。馬鹿だなあ。


「わたしはね、死因は寿命が良いの」
「…ほォ」

綺麗な死に際を望んでいるわけではないけど、女なのだからそれなりに華をもって死にたいと思うのは自然な事だ。ひとは皆、ロマンチストだもの。ね?だから晋助


「あたしに飽きたら、あなたが殺してね」


高杉はその台詞を聞いて首をかしげた。

「俺に殺されるんなら、それは寿命とは言わねェだろ」
「寿命の命は、運命の命」



わたしの運命は、あなた自身でしょ?だからわたしは運命に生かされて運命に殺されるの。ああ、なんてロマンチック。
そう言ってにこりと彼に笑みを向ければ、晋助は私を引き寄せて吐息のかかる距離で腰の疼くような低音を吐き出した。それから今迄にないくらい幸せそうに目を細めて、わたしにキスを落とした。
傲慢な唇でなぞり奪って俺の死因も寿命にしてくれよ
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