「……あ、と。すいません生きてますか?太子」
「ま、まさか単品で湯飲みが……湯飲みが飛んでくるなんて思わなんだ」
「すいませんまさか人がいたなんて。あたしいらいらしてたから太子が通りかかってつい」
「完全に私めがけとるやんけー!!いらいらしてたとしても!湯のみって、湯のみっておま」
「ハイハイ太子ごめちょごめちょ」
「尊敬するほど謝る気一切感じられないー!」

青ジャージにこのアホっぽい面構えの男はあたしの上司である聖徳太子と云う名のイカだ。正確に言えば言語知能を身につけたおもしろいイカで「ちょ、ストップ!」…なんか急に割り込んできたんだけど怖い。

「太子、割り込みは禁止ですよ。順番は守らないと」
「そうは言ってもキミ…」
「お母さんに教わらなかったんですか?イカ野郎」
「ごめんなさい…あ、謝っちゃった」

ムキーと憤慨する太子を横目に、妹子さんは大変だなあと若干かわいそうに思った。



「なまえ。私とデートしよう」

「は?とち狂ったんですか」
「と、とち狂ってなどいないぞ 摂政だ!なー、いいだろ?デート!」
「うるさい!」
「パゴモッ」

なんだこのイカは。あたしとデートがしたいなんてサラッと言いやがって…そもそもデートが何か知ってんのかこの人。それを知っている上で言ってくるんであれば相当だけど、太子の場合はおそらく100%思いつき言動に違いない。くそ、むかつくイカ男め!(誰がイカ男だ!)また割り込んできたっ



「これでも私は摂政だ!デートの意味くらい心得てるぞっ」
「…ふうん」
「さては信じてないな!何故だっ、聖徳太子なのに」
「んじゃあ言ってみてくださいよ」
「デートとはなあ、手をつないでお互いドロドロ…じゃない、ドキドキしながら街を歩く遊びだ!」


もうこいつアホだ、と喉元まで出かけた罵倒は発声する前にすうと消えた。
思い当たる理由はみっつ。

「私だって誰とでも良いわけじゃない!なまえだから言ってるんだぞ」
「あたしだから、ですか」
「そうだ。な?だからお出掛けしよう」
(あたしの返答なんか待ってないじゃん)

しっかりと繋がれてた手のひらの温もりが心地よかったから

「今日も良い天気で良かったですね」
「お、それ今私も思ってたやつだ。以心伝心か?」
「何あほ言ってんですか」
「むきー!今日に入って何回目のアホだ!?」

太子と居る時間がわりと面白いから


「太子、どこいきます?」
「ああ 全然全く考えてなかった」
「(このイカが!)」
「でも私はなまえと居られるなら何処でも良いぞ。デートだからな」
「…」

こういう事をサラリと云えてしまうあたり、このひとは天然のアウトロー気質でも備えているような気がしないでも無い。太子の笑顔はいつだってキラキラしてるのだ。むかつくけど。そこには素直に惹かれる、


「じゃあ…洛陽のあたりまで」
「ら、洛陽!?あそことはちょっとごたごたが、その」
「嘘ですよ。お散歩なんてどーですか」
「う、うそ…?何故…ま まあいいや、じゃあ散歩!三歩で散歩にレッツゴー」
「寒いです太子死んでください」
「くっ…さては妹子の入れ知恵だな!くそ、妹子のやつー」
「はーいはい、行きましょ」

春一番警報 発令
「なまえ!」
「なんですか、太子」
「私は今ドキドキしているぞ」
「そんな胸張って言われても…そうですか、」

あたしもですよ、太子
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