今日はすごい摩訶不思議な出来事が起こったので、手紙に書きたいと思います。え?何でメールじゃないかって?それはおいおいに分かるよ。まあ聞きなよ。え?めんどくせーから友達に言えって?お前友達だろバカヤロー。では、今からは話す事はくれぐれも内密に。私命かかってるんで。重い?知るか。――私はその時、塾にいた。



「ああー…だるっ」
「苗字さん、他の人の士気に関わる発言は止めましょうね」
「だってせんせぇ、私今無気力なんです」
「いつもでしょ。いいから早く問3」
「ういー」

窓側の席は私の特等席だ。誰が決めたわけでもないけど、ここに座るとテストの点が10点は上がるのだ。そんな気がするのだ。あ、決めたのあたしだった。
私はかりかりと問3の答えを綴りつつ、溜息を吐いた。
(ああ、憂鬱だ)
さっきも言ったように私は無気力だった。
勉強には追いついているけどやる気が出ない。教室内にいる他の5人はわりと真面目に勉強している。そりゃ勉強しに来てるんだから当たり前なんだけど…。とにかくつまらん。つまらなすぎて今詩を書いたらそれはもうすごいものができそうだ。逆にね。(清少納言が枕草子を書いた時も相当暇だったに違いない。)春はあけぼの、だっけか。私はぼんやり窓の外に目を向けた。――――そして、息が止まった。


「……は?」

人が、いる。3階の窓の外に。


「せ、せせせせせんせぇええ!!」
「うるさい苗字さん」
「ほ、ほら外みてよアレ!!うるさいとかじゃなく!」

先生は私に言われた通り外を見て「ああ、きれいな飛行機雲ですね。問3やれ」…どうやら先生だけでなく他の子達にも見えていないようだ。私は窓の外を凝視して、固まる。
冗談だろ。これは世に言う幽霊という奴か!おい!私霊感なんてミジンコほどもないはずだけど!

バチ

「目があったぁああ!!」
「苗字さん、いい加減にしないと菩薩のように優しい先生もキレますよ」
「菩薩いうな!ってか、先生、私ヤバい幽霊見える目あった!!ちょ、もう帰ります!熱あるんで」

私がそうシャウトした所で塾の壁が吹っ飛んだ。
つんざくような悲鳴がそこかしこから聞こえる。
え、ここ戦場でしたっけ?

爆炎の中からヌッと出てきた腕が私の腰をがっしりホールドした。その瞬間私は悟った。
あいつだ。
例の……霊。

「おい女」
「ごめんなさいダジャレなんて言ってごめんなさい」
「あ゛?」

なんだこの霊!めっちゃ凄んでくる。私がヒーと嘆いていると「テメェやっぱり見えてんな」と幽霊的発言をかましだした。やっぱりね。きっと昔切腹して死んだ霊だ。お腹に穴空いてるもん。

「霊さん…どうぞ、ぞうぞ天国にお向いください…!私を道ずれにせず!ひとりで!ひとりぼっちで!」
「テメェ何勘違いしてやがんだ」
「…え?」
「俺は霊じゃねェ」
「!まじすか。でも浮いてましたよね」
「あ?ウッセーよ浮いちゃ悪ィのか」
「悪くないですけど」

「苗字さん!!さっきから何を独り言ばかり!早く逃げなさい!先生先行くからね!」
「いや待って!!菩薩とか言ってたじゃん!せんせぇえ!」
「ハッ見捨てられたな」
「あんたのせいだろ!」
「あ゛」
「あなた様のせいにございますでしょうが…こら」
「面白ェ。行くぞ」
「は?行くってどこに…――――ギャー!!」

そして3階の剥き出しになった壁からお外へダイブ!風になった気がした。実際なってないけど。
なぜか空中をポンポン蹴って走る幽霊さんにひたすらしがみ付いて落ちないようにしていると、やがて私は商店街に下ろされた。へたり込みそうになる私の腰を支えてくれたその人物を、私はあらためてまじまじ見た。

短ラン?オールバック?
今日の空みたいな色の髪
どう考えても開いてるお腹の穴

ぽくぽくぽく・ちーん

「武士に憧れて切腹し損ねて死んだ不良の幽霊!」
「何がどうなってそうなんだよ」
「チッ、またハズレか」
「何だテメェ」
「ところで幽霊さん。あなた私をどうするつもりですか。私真冬に制服と靴下一枚っていう有り得ないスタイルなんですけど」
「ッチ、うぜぇな」
「あ!」

幽霊さんはフッと姿を消したかと思うと、数秒後フッとまた現れた。手に私のローファーと誰のか分からないフカフカのコートを持って。

「し、瞬間移動!」
「ちげぇよ」
「ありがとう。…でもこれ誰のコート」
「さあな。落ちてた」
「なんと」
「履いたらさっさと行くぞ」
「え、だからどこに行くんですか?というかあなた誰です?」
「今更かよ」
幽霊さんが初めて笑った。

「俺はグリムジョーだ。こっちにはある男を消しに来た。でもさっき見てきたらまるで腑抜けてて殺す気が失せた。やる事もなくなってフラついてたら俺を見てギャーギャー騒ぐ女を発見。確保。よって今からテメェは俺の暇つぶしに付き合え」
「ひ、暇つぶしだと!塾半壊させといてあなた」
「ちなみに、飽きたら殺す」
「なんて暴君」



ということで、私はその日の午後をグリムジョーの暇つぶしに付き合うことで使い果たし、殺されないために一生懸命お喋りとかしてたら何か気に入られたらしい。今は”うぇこむんど”というところへ絶賛拉致られ中です。携帯はへし折られました。この手紙が届くかどうかすら心底怪しいんだけど、どうか可哀想な私を助けに来てください。
お願い、一護の大好きな苺あげるから。待ってます。あなたの親友なまえより。



「…」
「なあ一護、さっきのハト何くわえてきたんだ?」
「…ああ」

見なかったことにしてぇ!

(俺別に苺好きじゃねぇし!!)
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