「な…つきぃ……」

畳でイビキをかいている翔太の寝言に、私の耳はピクリと反応する。先日盛大に失恋した可哀想なこの幼馴染は、いまだに傷心中である。男のくせに!ゴールデンボンバーでも歌ってやろうか!

「…」

そんな事を考えつつも、翔太の寝顔を見ていれば心のもやもやは直ぐに晴れてしまう。
無邪気と表現するにはやや厳ついが、眉間のシワは普段より浅い。
足の低いテーブルの上には、飲み干された麦茶のパックと溶け切ったオレンジシャーベット。翔太は飽きると途中で投げ出す癖があるので、彼の投げ出したアイスやらお菓子やらを食べきるのはいつも私の役目だ。
今日はあまりお腹の調子が良くないから、と断ると、翔太に食べ残されたアイスは必然的にこうなるわけである。


「自己中男…」

よく警察官になれたね、ほんと。私初めて高3の時に翔太にその夢を聞かされてひっくり返るくらい驚いたんだよね。
だって翔太は校内じゃ有名な問題児だったし。(私もよく振り回されたっけ。)
自己中男な翔太は、自分に恋心を抱いている女の子の前でも、平気で夏希ちゃんを褒めちぎる。愛を語る。ひたすら愛でる。などする、わけですよ。だから、あなたに恋してた女の子はけっこーイタタな思いをしていたわけで。

でもまあ、今ようやく…やっと、その子にもチャンスが巡ってきたのかな。

「翔太」


起きない。
私は自分の髪を耳にかけて、翔太の頬に唇を当てた。

「好きよ」

すきだよ、おまわりさん
(……)ボッ
(あ、こいつ起きてんな)
120721
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