「ねえ、ヴォルデモートさん」
「…何だ」
「今日が何の日だか…分かる?」


白いシーツの中で儚く笑う女を抱きしめた。今日が何の日か、など聞かれなくても解っていた。だからこそ、言いたくは無かったのだ。

「俺様の知ったことか」
「ふふ」
「…何がおかしい」
「ヴォルデモートさんは優しいな、て」


闇の帝王と恐れられている自分に向かってまさかこんな言葉が投げかけられる日が来ようとは。目を細めて腕の中の小さな存在を見下ろす。傷の無い白い肌が、いっそう透明に近く見えて息を顰める。


「あれから一年。今日は、あたしが消える日でしょ」
「…寿命なら俺様がいくらだって」
「ううん、いいの。もう十分だよ」

なまえはヴォルデモートの頬を両手で包んで、自分の唇を彼の額に押し付けた。僅かに震えているその手のひらに気付けば歯止めは効かなくなって、薄く色付いた唇に噛みつくようなキスをした。


「…俺様が、行くなと言えば、お前の魂はここに居留まるのか」
「…そんなの一番あなたが分かってるでしょ?」

なまえは小さく微笑んで綺麗な瞳からぽろりと透明な粒を落とす。

「ヴォルデモートさん、あたしね。あなたの傍にいられて良かった」
「、なまえ」
「ここから見た世界はちっぽけだったけど、あなたの隣は凄く居心地がよかったの。
――――…あのね、あたし」


ヴォルデモートさんがだいすきよ




光の粒子となって腕の中から消えていった存在を惜しむように、ヴォルデモートはこぶしを握った。まだほんの少しだけ温もりの残るシーツから香る花の香りが、彼の頬に一筋の涙を残した。

苦いだけの逢瀬
俺様がそんなにも愛に飢えているのだというなら
(何故あいつである必要があった)
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