キャプテン、何やってるんですかそんなところで。声をかければゆるりとこちらに向けられた顔。眠そうだと言えばそうなのかもしれないが、どこか恍惚としたようなその瞳に、思わず見入ってしまった。


「ああ…海が静かだ、と思ってな」

わたしも耳を澄ませてみる。今日は風もそんなにないから波も高くないし敵船の姿も見当たらない。たしかに、静かな海だった。
キャプテンは船べりに腰かけて、足をぶらぶらと揺らす。それが見ていてどうも危なかしいのだ。ほら、キャプテンは能力者だし。

「キャプテン、危ないからこっち来てくださいよ」
「おれに命令するな」
「命令じゃなくてお願いです」
「おれにはお願いもすんな」
「お願いも!」


不貞腐れたようにまた顔を海へ戻すキャプテン。わたしはため息を吐いて、仕方なくキャプテンの隣に腰を下ろした。少しお尻の位置をずらせば落ちてしまいそうで怖かったけど、海に映る三日月はそれなりに綺麗だった。

「なあ、考えたことあるか」
「…?」
「俺達がこうして夜を見過ごしてる間にも世界は動いてんだ」


キャプテンは何とも伺えない瞳でぼんやり遠くを見た。

「俺達が浮かんでるこの海だって、地球の裏側じゃ何隻もの船を飲み込んでるかも知れねェ。それが俺は怖くてな」
「怖い?キャプテンが?」
「おれにだって怖いもんくらいある」
「へえ…全然想像できません」
「例えば、そうだな。おまえたちを失うのも怖い」


息をのむわたしの隣で、キャプテンは相変わらず何を考えているのか分からない目をしていた。今日のキャプテンは、どこか変だ。



「一人で生きていけると言うやつもいるが、そんなんじゃ船長なんぞやってはいけねェだろうよ。
そういう奴は、ただのひとりぼっちとして、海にのまれていっちまうのさ」


キャプテンは泣いているようだった。だれにも気付かれること無く。心で泣いているようだった。今日の戦いで死んだ何人もの仲間達のために、わたしたちの、為に。キャプテンはひとりで泣いてくれていた。


「、キャプテン」

ごめんなさい。でもひとりで背負わないほしいんです、わたしたちはあなた程強くはないけれど、あなたを守りたい。ごめんなさい、こんな事を言ったらキャプテンは怒るだろうから言わないけど、みんな、あなたの為ならいつでも身を捨てる覚悟はできているんです。ごめんなさい、不謹慎でもそれでも、こうしてあなたが私達を惜しんでくれているのが分かると、わたしたちは堪らなく、嬉しいんです。キャプテン

「ごめんなさい。(大好きです)」

二十一度目の懺悔/091123
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