私が働いているところの結構えらくて暗殺集団を手足のように動かしてこきつかってる人は、名をスパンダムと云って決して頭が良いわけでも強いわけでも無いのに権力だけどうでも良いほどにあるような、そんな人です。そして彼は給仕の私がビックリ卒倒するくらいにアホでもありました。



「うわッちゃア―――!」
「ちょ、スパンダム長官!アンタ今年に入って何回コーヒー零せば気が済むんですか!」
「ば、ヴァ、ヴァァアアカ!まだたったの、46回目だボケ給仕!」
「何ですって!?」

この前廊下ですれ違ったルッチさんはこの人の事をバカだアホだとさんざんに罵っていた。尤もだと思う。もううざいから私語りで展開してくの止めます。放棄。はい、スパンダム様パス。


「お前給仕のくせにこの俺にたてつく気か!」
「誰もそんな事言ってないじゃん!」
「タメ口!!」
「いっけね」

ギリギリギリ、と奥歯を鳴らしてスパンダムは思考をめぐらす。どうしたら俺の権力を解ってくれるんだこいつは!無理なのかな、いやそんなはずねぇ!


「とにかく!コーヒーのおかわり持ってこい」
「チッ…かしこまりました」
「舌打ちしやがった」

どんなに口の悪い給仕でもコイツの淹れるコーヒーはピカイチに美味いのだ。よって俺がこいつをクビにする日なんて永遠にこなくて、そう!こいつには結婚とかそんなんさせねぇでずっと俺の給仕をしてもらうことにする!まさに権力あっての命令だ。

「コーヒーお持ちしました」
「おい!」
「うわ、」
ガチャン、ビシャア。
「…」
「……悪ィ」

いや、事故だから
しばき倒しますよ、スパンダム様
- ナノ -