きゃっほーう!なんて、騒々しさの最中にはやはり彼女の声。スパンダムは零しかけたコーヒーを一旦机に置いて、訝しげに窓を開け「へぶぼはっ」
真っ直ぐ平行に飛んで来たのは雪玉。
ここで初めて開けた事を後悔するが、それも所詮後の祭りといえた。


「冷てーな、ドちくしょう!」
「よっほーいスパンダム長官」
「…名前」
「なんですかー?そのうんざりした顔はっ」
「お前は何やってんだ」
「見りゃわかんでしょー?」

雪合戦ですよと、綺麗に笑いながらさも当然のように言葉を紡ぐ。


「おお、長官じゃ!」
「隙ありだぜ」

名前の後ろからひょこりと顔をのぞかせたカク。数秒後…彼の顔面に叩き込まれた雪玉の発信源は、少し離れた場所でげらげらと笑っているジャブラだ。


「長官も来ますか。楽しいですよ」
「…ルッチ。本当にそう思ってるならもっと楽しそうな顔してみろ」
「そんなこと言うなんてセクハラですよ、長官」
「今の文章のどのあたりにセクハラ的要素が含まれていましたか!」

「いいから(俺の代わりに)あのバカ共の相手してきてください」


無情にも寒空の下、雪の地面にほっぽりだされたスパンダムだが特に仕事をしていたわけでなく、冬になってあまり活動しなくなったファンクフリードを眺めていただけだったため断る理由もなく渋々参戦。


「それじゃあ、長官はあたしとチームね!」

それにしても相変わらず、何をするにせよとことん楽しむやつだな。
いやその点で言えばカクやジャブラも負けてねェんだろうけど…
隣で心底楽しそうにしている名前を見てひっそりと思いふけるスパンダムの顔に、再び雪玉が命中する。


「あ!すまんのう長官!流れ玉じゃ」
「流れ玉っておまっ…顔面命中なのにか」
「文句はジャブラに言った方が良いと思うがのー」
「何言ってやがる、今のはお前だ狼牙!」

乱闘突発。こうなった二人は、燃焼しきるまでやらせとくのが一番効果的だという事は
名前もスパンダムも良く分かっていた。


「もー…雪合戦したかったのに」
「まあ良いじゃねェか。こうなりゃやるこた一つだ」
「…?」

「ほら見ろ!スパンダム特製雪ファンクフリードだ!」


そこに君臨したのは、何とも形容しがたい…ぞう(?)どこらへんが…というと其の塊から斜めに突き出している棒(鼻)あたりが何とか、と答える他ない。――事実この作品はへたくそだった。

得意げにへらりと笑う長官。
スノーファンクフリードと名付けよう、なんて言って嬉しそうにしてるもんだから、つい。


「かわいい」

ぼそり。思わず零した言葉に一番驚いているのはあたしだったりする。
だって三十路すぎのおじさんがかわいいなんて相当おかしいとしか言えない。
でもまあ聞こえてはいなかったらしい。長官は相変わらずそれを眺めてしきりに頷いている。

と思えば、ふいと顔をこちらに向けて少し目を怒らすのだ。


「ばっか、こいつはかっこいいんだよ」
「……」

訂正、

聞こえてた。そして凄くあほみたいな勘違いをしている。あれ?まだ何か言いたいみたい。ごにょ、ごにょ
かわいいのはオメーだろ、……って
くそ大好きですちょうかん…!
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