雷が怖いだなんて、そんな恥ずかしいこと言えるわけがない。だけどこの事実は否定しようとするものならば余計に追い打ちをかけてくる。トドメともいえる一筋の閃光と音に私は部屋を飛び出した。
「すぱ、スパンダム長官。入りますよっ」
返事など聞かずに部屋に駆け込み、
寝起きで何が何だか分からず目を白黒させているスパンダム長官のベッドに潜り込んだ。
「お、おい名前。お前何してんだ!」
「…一緒に寝ましょうよ長官」
「はァ?」
「文句なんて受け付けません!さァほら!」
むりやり上体をベットに倒して、その腕にしがみついた。ビカッ…ゴロゴロ!音が耳に入る度に腕に力を込める。音が聞こえないように長官の肩に顔を押しつけた。
「雷、か…?」
ぴくりと動いた名前の肩に気付いたスパンダムは小さく笑みを浮かべた。
「ヴアァアカ!雷怖がってて、よくCP9に入れたなァ」
「…っ」
「早いとこ克服しねーとそのうち…、て、おい。名前」
「長、かんのばか…」
ベットの中でぐるりと背を向けられた。な、泣かせた!?俺が泣かせたのかコレ!
「あたしが、カミナリ怖いなんてひとこ とも言ってない、じゃん…うっく」
「そそそそそ、そんなん見りゃわかるだろ!」
「怖くない、し!」
再び体を起して名前を見下ろす。シーツに埋もれて顔は見えないが泣いているのは確かだ。ああ、くそ…何で泣かしちまったんだ俺ァ!こいつがCP9にどんだけ入れ込んでるか忘れてたぜ
「だぁああ!俺が悪かったからもう泣くなっ」
「泣いてねー、ですし」
長官とこなんか来ないでルッチのとこ行けば良かったと洩らせばピタリと止まったその動き。
「…?ちょうか、んんっ」
キスというより、唇に噛みつかれたという方が正しい。酸素など吸わせないとでもいうように絡めとられた舌は熱をもつ。そろそろ酸欠というころ、やっと長官は顔を離した。
「は、あ…っは」
「お前が」
「…?」
「お前がルッチんとこ行くなんて云うのが、悪ぃ」
唇を尖らせた長官。このころには涙なんかすっかり乾いてしまっていて、目元だけが妙にひりひり痛んだ。
それから長官はあたしのことをぎゅううう、と抱きすくめて「寝ろ」と呟く。
腕にひっついてるのもそこそこに落ち着いたけど、こうしてもらうと格段に違う。外界とは遮断されたような気になって、もうカミナリは怖くないと思えた。長官の服の胸元をしっかりつかんで、私はゆっくり目を閉じる。
おやすみ、と長官のあったかい呟きも聞こえた気がした。
シュールに愛した