授業中の不自然に静まり返った教室のなかで、私はぼうっと眼先の白を眺めた。ピー魂学園のなんとか先生っていう銀髪の国語教師も相当やる気無いと聞くけど、目の前にいる白衣の男も負けてはいなかった。


「今日は数学のユースタス先生がおやすみなので、自習としてプリントを配る」


先程のその台詞に一部の女子が色めきたった。なんせこの学校の校医はモテる。授業そっちのけでロー先生に熱い視線を送っている女子生徒も少なくはない。…と、わたしもそんな中のひとりにされたら堪らないので、視線を机の上のプリントに落とした。

ふと顔を上げて固まる。


ロー先生が、あんまりにも優しげな眼差しを向けていたから。その視線の先には、必死にプリントと睨めっこしているわたしの親友の姿。整った眉をぐっと寄せて眉間にしわを作っている彼女に、先生は静かに近付いていった。

「    」


先生がかがんで何かを囁くと、彼女は途端に真っ赤になった。先生はおかしそうに笑ってかがめていた腰を伸ばした。数分にも満たない出来事はわたしのなかに小さな波紋を残す。恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかむ親友と、彼女を優しく見つめる先生から視線を離して、またプリントに向き直る。
わたしは先生のことが別に好きでもなんでもないはずだったのに、どうしてか泣きそうになった。
せんせい、せつないです。
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