シャボンディ諸島にて海賊が、天竜人を殴りとばしたらしい。

個人的には「よっしゃあ」な出来事だけども、世間体としては大惨事だ。
諸島の隅の方でぶらぶらとパトロール中だった平海兵のあたしも収集されるくらい事態はまずい。
あたしもそれなりに焦って現場に行ってみると、戦場の緊迫した空気。
その前に、何で皆あっち側に居るんだろう。何でこっちに武器向けてるんだろう。あれ?

この人達だれ


「そんなところでなにやっとる、ばかもーん!」

准将の怒号が遠くに聞こえる。
近道をしようとして通常通路からズレたため、ヒューマンショップの直ぐわきから登場してしまったらしい。
ということは、この凛々しく立たれる3人は海賊なわけか。


あたしに一番近い所にいるのは、麦わらくん(懸賞金3億)。
真中はユースタス・キャプテン・キッド(懸賞金3億1500万)奥にいるのは、死の外科医(懸賞金2億)
わあ全員億越えだすごーい

「准将ウウウウ!!」


彼らの強さを本能的に認識してからのあたしは速かった。
光のスピードで味方陣営に向かって走り、やや焦る指揮官に飛び付いて首をがっくがく揺らす。

「何であたしに近道すんなばかたれ!って教えてくれなかったんですかァアア」
「い、言った。私はちゃんと言ったぞ無線で」
「今のでアイツらに完璧に認識されましたよあたし!」

どうしてくれんですかァ!と訴えれば、
すぐ近くにいた同期の海兵が切羽詰まったような声であたしを呼ぶ。(え?なにが危ないって!?)
あ、れ…お腹に巻きついてるこのグニグニしたの何。
途端にぐん、と景色が脇を流れていく。て、てかあたし、ひっぱられ、

ひゅう、と風を切る音が聞こえなくなったら、代わりに衝突音。それから衝撃。


「いた、たたた…な、なに!?」
「悪ぃ!」
「いえ大丈…って何であたしこんな処までリターン!?」
「思わず引っ張ってきちまった!」

けらけらと楽しそうに笑う彼、麦わらのルフィ。
今回の事件の引き金となった男だという報告を受けてはいるけど、個人的に彼は嫌いでは無かった。
なんせ笑顔がキュートだもの


「こいつか、さっきのバカは」
「ぐえ」

首元から引き上げられてジタバタもがけば上のほうから降ってくる失笑。
間違って敵地に乗り込むなんざとんだアホだ、とでもいいたいのか、間違ってないけどね。

「ユースタス屋、オレにも見せろ」

「あ?おら」
「ぎゃ、ぶん投げ、」

浮遊感の最中に見たのは口元を歪める死の外科医。ていうかぶん投げるとか信じらんないユースタス!
王子様がごとく華麗にキャッチしてみせたトラファルガーだが、未だその怪しげな笑みは取り払われていない。


「その髪の色、ジュエリー屋みたいだな」
「ジジ、ジュエリー・ボニー!?…というか降ろしてっ」
「クク」

あたし普通に弱いんだから!
あ、そうだ。准将なんで助けてくんないんだろ。あれ?なんか迫撃砲こっち向いてない?


「やつらの興味があれに向いてるうちに狙えー!」

嘘でしょ!あれって言われた!まさに囮大捜査線じゃないですか。いつものサボリ癖が仇となったか!くう、もっと真面目に職務についてればよかった!


「見捨てられたな」
「うっさい!海兵なめんなよ!」

おもいっきり手を突き出して見れば其れは見事トラファルガーの顎にヒット。
軽やかに地面に着地して逃亡…はできなかった。
何故なら思わずぶっ倒れそうな程の数の弾がこちらに飛んできていたから。(おいそこ!手を合わせるな!)


「ゴムゴムの風船ー!」
「ええ!?ふ、太っ!?」
「だいじょぶかー、おまえ」
「っだだ、大丈夫でっす有難う」
「にしし!」


次の砲撃はリペル云々でユースタスに助けられ(「怪我したくなかったらすっこんでろ!」)
その次の砲撃はルームうんちゃらでトラファルガーに助けられた(「てめぇ後で覚えとけよ」)
もうどっちが味方か解らない光景だ…。


如何していいか解らず彼らの後ろでおろおろとしていると、
入口からぞろぞろ出てきた各海賊団のクルー達。
3人の船長に護られるように座り込んでいる私を見て「どうした」「大丈夫か」と声まで掛けられた。

「あの、あたし海軍なんスけど」
「え?あ!ほんと…制服着てるわ。気が付かなかった」
「ほんとね」

近くに居たオレンジ色の髪の毛のボインな姉さんと、黒髪美人は呆れたように笑う。


「あの三人、何、何考えてんですか!?」
「さあ。私達にもさっぱりわからないわ」
「と、取りあえずあたし戻らなきゃ、て、え」

立ち上がった拍子によろけ、咄嗟に近くにあったものをつかむ。金色の、ふさふさした…?

「んげえええ!さつ、さ、殺戮」
「…離してくれ」
「ひい、すんません抜け毛になったらすんません!」


土下座をしてから飛び起きて、走る。ゴムゴムで逆戻り。もう逃げようと考えるのは止めた。

「それ剣だろ?無理だと思うけど…船長に向かってってみれば?」
「そうしたいんだけど。何度か助けてもらった手前、斬りかかるのはちょっと」

うちの船長はそうと分かって助けたんだよ多分、とは言えず助言をした白クマは黙ってしまった。同じように沈む彼女にキャスケットは飴玉を手渡してやる。

「…どうも」
「お互い大変だよな。がんばろうぜ」

階段に腰掛けて、もらった飴玉を舌の上で転がしながらあたしは思うのだった。
(海賊って以外にやさしいんだね。あと、)


フリーター!(自由人)
海軍をクビになったら海賊に転職しよう。
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