「ねえ、エース。きょ…今日暇?」
「あ。悪ぃ用事あるんだ!」
「そ…そっか」


ガックリと肩を落として落ち込む名前を余所にエースは鼻歌を歌いながら部屋を出ていった。近くで事の成り行きを窺っていたマルコは気遣うように名前の肩に手をのせて同じように部屋を出ていく。
ありがとう、マルコ。だけどそんな同情に満ちた優しさは要らないよ…


ぽつんと独りきりになって寂しさ倍増なので、私もゆるりと立ち上がって外に出る。甲板にごろりとねっ転がればすぐ傍でグララ、と独特な笑い声が聞こえた。


「…ジジイ」
「ジジイはねぇだろ、名前。オヤジだ」
「ありゃ…?ナースさん達は?」
「久しぶりに港についただろ。買い物にでも行ってきやがれって言ったら大喜びですっ飛んでったぜ」
「へーへー、そうですか、そりゃまたお優しい親分だことで」
「グラララ!なぁにを拗ねてやがる」
「…別に」


あたしだってエースに用事が無ければ今頃エースとラブラブショッピングの最中だったっつーの。唇を尖らせていればゴクゴクと美味そうに酒を飲んでいたオヤジがまたひとつ笑いを零した。

「お前いつだったか、エースと大喧嘩した日があったろ」
「…忘れた」


うそ、ほんとは凄く覚えてる。あたしが思わずエースの事をぶん殴っちゃったくらい怒って、エースも本気で目を怒らしてマルコ達は大慌てで止めてくれた。原因は、なんだったっけかな。
あの喧嘩の所為で船に少し穴があいて焦げ跡が残ったんだ。そんでオヤジに超怒られて二人で軽く土下座して

…今思えば笑けてくる。


「おい、そこのバカ娘。さっさと船下りろ。テメェと同じバカ息子がさっきからうろちょろしてて目障りでしかたねぇんだ」

一度目を瞬かせて、名前はくつりと笑う。


「そんなの解ってるし。またね、くそオヤジ!」
「グラララ!かわいくねえ娘だ」

名前は軽い動作でぴょんと飛び跳ね、地面に足をつけた。顔を上げれば驚いたエースと目が合う。数秒間の沈黙の末に口を開いたのはエースだった。


「ええと、よ…何て言うか」
「…何?」
「今日お前誕生日…だよな。間違いねェよな!」
「え?…うん」

「ほら!」


エースが差し出したのはどこから取り出したのやら大きな花束。
色とりどりの花が名前の目を奪う。

呆けていた私に押し付けるようにしてそれを渡したエースは照れたように目を細めた。どきん、やばい、でしょ その笑顔は

焦げ跡、
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