あのひとがこの世界からいなくなればいいと何度も願った何故ならあのひとがこの世界に居るだけで私は呼吸ができなくなるからだ怯えて怯えてたまに愛して目の前がチカチカと光る波の渦に飲み込みれていく。そんななかであの人はあの人だけはどうしてかわたしをその波に飲み込ませないように自分がそれより大きな波となってわたしをとじこめるのだ。


「キッド」


死にそうと呟けば、じゃあ死ねとそんなこと欠片も感じさせないような柔らかく優しくでもどこか冷たく冷酷な笑みを向けて私の唇に噛みついた。ほらねこうしているだけで酸素は足りずわたしはもがき苦しみながら享受する。この苦しみと彼と言う永遠の呪縛を理解するのだ。


「もしほんとうにわたしが死んだらキッドはどうするの」
「悦ぶ」
「どうして?」


「お前を殺すのは、この俺だろ」


俺のこの手でお前を殺すなら文句はねェし誰も文句は言わない。もちろん死んだお前にも文句は言わせねェよお前は俺のもんだその心臓も血液も爪の先まで全て。
――独占欲なんて言葉じゃ生ぬりィよ。

死ぬほどの愛を俺に捧げろ俺の隣で生きたことを俺の手によって殺されることを誇れ一瞬でも自分の人生を後悔しようものなら俺はお前を忘れてやらねェぞ俺の中からきれいさっぱり消えたいのならそれなりに潔い死に様を晒せ、我が人生に一片の悔いなしとでも言うといい。
わたしを取り巻く海は大きくいとも容易くわたしを虜にしてみせた

ここで生きたいとおもった
ここで死にたいとおもった

わたしはさっきあなたなどいなくなればいいと言ったけれどそんなの嘘だいなくなってしまっては困る針路が見えなくなる光を失えばそれこそわたしは本当にこのひろい海でひとりきりになってしまうそれだけは 厭だ
殺すことも殺されることも出来ないのなら今しばらくは生きてみるしかないのだろう。ああ しんどい
メビウスの環