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前回のあらすじを10文字以内で述べてしんぜよう!「キッドさんがデレた!」以上。


「ど、どええええ!!そ、そそそんなまさかこれは夢なのかな、また夢オチなのかなコレは!」
「別に夢でも夢オチでもねェ。現実だ」
「じゃあついにデレ期が」
「それもねェ!もう面倒になってきたな止めっか「ぎゃあああ待って待ってお口閉じますチャックします」



わたしが傍へ寄ると、キッドさんは何のためらいもなく濡れタオルを私の顔面に押し付けてきた。息…!息ができません!


「もご、ふごご…ぶはっ」
「よし。下手くそな紅は落ちたな」
「げほ!へたくそとは…」


軽くショックを受けつつも私は今の現状がまだ信じられないでいた。キッドさんの公認でキッドさんをこんな近くから拝み倒せるなんて。

「…おい、何やってんだ」
「両手でほっぺたを伸ばしたりしてます」
「現状は聞いてねェ!その理由だ」
「にやけちゃうので…ちょっと」
「ああ。じゃあおれが手伝ってやる」
「え?手伝うって何を」


ドォン、ドン、ドンドンドドン…!!

「うぎょえええ!!!」



キッドさんが私に向けて撃った5発は、顔面からにやけを取り払うには十分であったと言える。しかしキッドさん…銃も使えんのか!心底ひやひやしたし私のバラ色ライフもついに終了かと思ったけどでも銃構える姿とかまじ萌えました。今度からは適度にキッドさんを怒らせて死なない程度にこの立ち姿を拝見させていただこう!と思いました。あれ?作文?


「こっち向け」
「どぅぎゅひ」
「動くんじゃねェぞ」

キッドはなまえの顔をつかんでこちらに向かせた。奇怪な声を発したなまえのこともスルーである。



「赤……似合わなくはねェだろうな」



ぽつり、呟かれた台詞ひとつ。
それはわたしに千のときめきを与えるのには、じゅうぶんだった。

**

そうだ、似合わなくはねェはずだ。
いままで特別意識して見た事は無かったが、こいつはもとから色白だから赤もきっと映えるんだろう。

キッドはなまえの顔に手を添えて紅をひいていった。
ふっくらとした薄桃色の唇が色付いていくのを、どこか恍惚とした様子で眺める。ああ、またかよ。



腹の底が疼く、



どうなってんだ俺は!間違いねェこれは風邪じゃなくて病気だ…!そうとしか考えられねェ。だってそうじゃなかったとしたらお前、これ



不意になまえが静かなことに気が付く。いつもだったらギャアギャアと煩く喚き鼻血のひとつでも吹いているだろうに、何故か微動だにしねェ。妙だ。
手を止めて視線を上げて、固まった。

おいてめェ…いい加減にしろよ。

「…、」

ピンク色に色付いた頬、心無しか熱っぽく潤んだ瞳。そこからはいつもの騒々しさは感じられず、年相応の色気が垣間見えた。腹の奥底に燻ぶる、このむず痒い感覚の根源はやはりこいつにあったらしい。
チクショウと心の中で吐き捨てて、俺は今しがた俺がつけた紅に噛みついたのだった。

ふみこえた一線
(テメェが、悪い)

 
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