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寝袋の中。ごそごそと寝返りを打って、背中を向けるキッドさんに視線をやった。

何度もかけた奇襲ならぬ夜這いは一度足りて成功せずに終っている。いやいやまだ夜は長いぞ頑張れなまえ!…とはいっても流石に眠くなってきた。それにキッドさんを疲れさせてしまったら明日在るやも知れぬ戦いに支障をきたす恐れがある。そのきっかけを作っちゃうなんて考えただけでもゾっとする……って誰ぇええ!これ誰!わたし!?なんだこのシリアスヒロインみたいな台詞は!

それにしても…

「寒っ」



***


――もう奇襲をかける気は無いらしい。あれきり静かにはなったが寝ている気配も無い。あらぬ妄想にでもふけっているのかと思えばふいに寒いと小声が聞こえた。
海の夜は割と冷える。冬島程ではないが寝袋ひとつでどうこうなる寒さでないことは確かだ。そういえば数時間前、ドアのすぐ近くに寝転ぶあいつが発した戯言を思い出した。

『ここならもし敵船が来てもわたしがキッドさんを守れますね!』
『馬鹿じゃねェの。敵船に気付かず爆睡しているお前が邪魔で部屋から出られなくなる間抜けな構図が出来あがるに決まってんだろ』

とにかく馬鹿なんだコイツは


「(俺がてめェに、守られてなんかやるか)」


それから暫くして「キッドさん、寒いです」と口をへの字に曲げたあいつがベットの脇に立つ。ンなもん知るかと言いかけるがしかし口から出たのはため息だった。

「勝手にしやがれ」
背中越しに感じるあいつの笑顔が、頭に浮かんで消えた。

真夜中
(わたしは境界線をも飛び越える女です!)

 
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