「…何してんの?」
元親が自宅の玄関のドアを開くと、見慣れた顔が二つ。 それと、数えきれない程のてるてる坊主。
「遅いわ長曽我部ェ!今までどこで何をしておった!!」
「いや、つーかアンタが何してんの毛利」
「貴様ッ、まさか私と毛利を置いて家康に会っていたのかっ!!?私を裏切るのかァァァ!!」
「まず落ち着け石田。ツッコミ所は満載だがとりあえず…」
「何してんの?アンタ等」
一応確認をすると、ここは長曽我部元親の自宅である。 そして元親は朝早くに仕事へ出かけ、一生懸命働き、くたくたになってたった今帰って来たばかりである。(だからめっちゃ疲れてるぜ!) ちなみに鍵はかけた。 かけた、筈だが。
「見て解らぬか愚図が。てるてる坊主を作っておる」
「いや、ここ俺の家な?」
「貴様も『雨嫌い同盟』の一員だろう。顔を出すのは義務だ」
「いや、え?雨嫌い同盟?何それおいしーの?」
「貴様は阿呆か?同盟ぞ、食せるわけがなかろう」
「うん、だよな。けどアンタに言われると物凄く腹立つわ毛利ィ!!」
「『雨嫌い同盟』の今日の活動場所はここだ。拒否は認めない」
「さっきからちょっと気になってたんだけど、俺はいつからその一員になってんの?」
「今更何を言っておるのだ。我がそうと言ったらそうなるに決まっておろう」
「拒否は認めない」
「何なの!何でこう自分中心なんだよ!あー!今日は大谷はいねぇの!!?」
「刑部は急用で今日は来ていない。何か知らんが、貴様に『哀れよなぁ』と言っていた」
「卑怯だあの野郎ッッ!!自分だけここから逃げるなんて!!」
「何!?刑部を愚弄するなァ!刑部は卑怯な事などしない!!」
「原因作ってんのアンタ等だけどな!!」
「貴様等、口を動かす前に手を動かせ。雨が止まぬだろう」
「ばっちり俺も入ってんだな」
「当然よ。日輪を拝むためぞ、手を動かせ」
「つーか今更だけどどうやって俺ん家入ったんだよアンタ等。鍵はかけた筈だぜ」
「大家に『従姉妹だ』と言ったら笑顔で開けたぞ」
「KGーっ!!てめっ、空気のくせに何してくれてんだァァ!!あと字、従兄弟な」
「黙れ長曽我部ェ!!口を動かす暇があるなら手を動かせと言っておろう、この約立たずの無能の捨て駒がァァ!!」
「アンタほんっと腹立つな!」
「雨は嫌いだ…篠突く雨などもっての他だ…」
「わーったよ!!やりゃいいんだろやりゃ!!」
「フン。初めから大人しくそうしていれば良いのだ」
「……」
「おい毛利、もうティッシュがなくなる」
「何だと…?長曽我部、そこのコンビニまで言って買って来い」
「…あのさあ、」
「何だ?」
「今、絶対日輪は拝めねぇと思うんだが」
「何ぞ長曽我部…貴様ッ、我の努力を愚弄する気かっ!!?」
おさらいしたい。 元親は朝早くに家を出て、一生懸命仕事をしてきたのだ。 外は雨こそ降っているものの、太陽を拝めないのは当然の事なのである。自然界の曲げられない決まりである。
「今、20時だぞ」
「「あ」」
「夜だぞ。太陽なんか出るわきゃねぇんだ」
「「…………」」
「どうしたお二方??」
「…ぉのれ長曽我部ェェェェ!!!」
「うぇっ!?」
「長曽我部貴様ァァァ!!!私を裏切ったのかっ!!」
「いやいやいやいや、ちょ、お前ら、え、何で!!?」
「これも全て貴様のせいよ!!今までの我の時間と労力を返せェェ!!」
「斬滅してやるぅぅう!!」
「うおぉぉぉぉわあぁぁぁ!!」
(凶王だって) (知将だって)
雨が嫌いなんです!
その後元親を見た者はいないらしい。
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