そうして今日も世界を廻そう
「何してるの」
「探してるんだよ」
「なにを」
「ぼくを」
自分と同じ顔をした弟は、目を閉じたまま答えた。
「お前はここにいるよ」
「ぼくはぼくだけど、ぼくじゃないんだよ」
「お前はお前だよ」
「ぼくの何があればぼくはぼくになれるかな」
微妙に噛み合わない会話にはもう慣れた。
閉じられたままの瞼にも、抱えられたままの膝にも。
放っておいたらどこかへ飛んでいってしまいそうな弟の手をそっと握ることも。
「何もいらないよ、僕がいるし」
「いらないの」
「ぼくがお前をお前だって分かってればお前はお前だよ」
握った手に力を込める。
「帰ろう、十四松」
2016/10/30/22:43