王子(童話)




窒息しそうだ、と。彼は思った。丸で水の中に居るようだと。

言葉、地位、肩書。与えられるその全てが重りのようにのしかかり、底へ底へと彼を促していく。それでも沈んでたまるものかと必死に藻掻いて、水上へ向かって夢中で腕を伸ばした。伸ばした先に、何があるか等知らぬまま、只がむしゃらに。そこに腕が届けば、救われるのだと。そう、信じて疑わなかったから。
けれど、幾ら懸命に腕を伸ばそうとも一向に距離は縮まらず、寧ろ遠退いている気さえした。それどころか、足掻けば足掻く程重りは増えて、鎖の如く身体中にまとわりついて離れなくなる。身動きも出来ぬまま、それでも何とか伸ばした腕は、水上に届く前に振り払われてしまった。
その時初めて、彼は知った。救いだと信じて疑わなかったそこは、此処と何等変わりはないのだと。否、若しかすると、此処以上に汚染された醜悪な世界なのかもしれないと。
そう、彼は理解した。結局のところ、何処へ行こうが行くまいが、彼が彼で在る限り、そしてその他が存在する限り、決して変わることはないのだと。関係性も、圧迫感も、何ひとつ。

変わらない周囲。変えられない立場。それでも、何とかしてこの息苦しさから解放されたかった。
期待、理想、願望。押し付けられるものの重圧と果たさなければという使命感。藻掻く。届かない苦しみ。遣り遂げた達成感と次への期待。のしかかる重り。沈む身体。欠落していく。
嗚呼、苦しい。呼吸が、上手く出来ない。嗚呼、嗚呼、嗚呼!











変わらない親や民。変えられない王子という立場。それでも、何とかしてこの息苦しさから解放されたかった彼の活路こそ、



――死体愛好。



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王子が何で特殊な性癖を持つに至ったのか考えたらこうなった\(^O^)/







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